やんの読書日記
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2004年05月22日(土) 冬至まで 上下

ロザムンド・ピルチャー作
中村妙子訳
日向房

エルフリーダ、オスカー
キャリー、サム、ルーシー
まったくの他人だった5人が
見えない糸にひかれて
スコットランドの古い家に集まり
クリスマスまでの数日を過ごすことになる
それまでのいきさつが上巻に
下巻ではそれぞれが心に持っている
苦難や悲しみを吐き出しながら
しだいに家族のように溶け合っていく
5人とも家族と死に別れたり離婚したり
親から疎外されたりして傷を持っているけれど
スコットランドのエステートハウスで
過ごすうちに、古い自己を捨て
新しい自分を見つける。
その日がまさに冬至
冬至は季節の変わり目。新しい命の再生の日だ。
5人を取り巻くスコットランドの自然、住む人の心を映す家
人々の暖かさが心に残る。

筋が通っていて前向きなエルフリーダが
家族を突然失ったオスカーを救い
自分の帰すべき家を見つけた
最後の部分が感動的だ


2004年05月20日(木) 蒼き狼

井上靖
新潮文庫

モンゴルの英雄チンギス・ハーン
子どものころの名は鉄木真
母が敵方に略奪されたときにできた子であるために
自分が本当に蒼き狼の子孫であるか
生涯悩み続け
それに打ち勝つために
勇気を示し、野心を持ち
結果として大帝国の祖として強大になっていく。

目的のために弟も殺し
実の長男を疑い、母を疎んじ
側室の子を捨ててしまう。
冷徹な男のような印象をうけるが
老齢にさしかかり、側室の死を迎えて
血族の愛を知るようになる。
自分と同じ運命を背負った長男ジュチの死を
知ったチンギス・ハーンの嘆き
生涯背負った、自分の出生のなぞを
振り払うことができなかったのに違いない
名実ともに蒼き狼であると自覚していたにもかかわらず・・・・

全編にわたる緊張感。簡潔で甘えのない会話
これはチンギス・ハーンが常に持っていた緊迫感だと思う

なぜモンゴルが強大になったか
精神的な理由だけでなく
実務的な部分で納得できるおもしろい物語だった


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