うたかた
2003年11月29日(土) 目じるしをつけていけば かならず戻ってこられる と思っていたんだ 泣きたくなったら来なさいね と言ったあの子のもとに 帰れるように 帰れるように って 僕は出かけたんだ 目じるしをつけていけば かならず帰ってこられる と思っていたんだ ヘンゼルとグレーテル みたいな 残酷な童話じゃないよ 僕ら人間の 現実にある儚い 物語なんだ 目じるしの先は もうすでに あとかたもないよ 僕の君の ステップ 2003年11月23日(日) いちいち 階段を上っている感覚は とてつもなく しんどい (だからといって エスカレーターに乗りたい とかそんなんでもない) ちっさい頃は いち段 いち段 数え上げていたのにな いち段抜かしを覚えて に段抜かしを出来るようになって そんで 数字だけ覚えて 足といっしょに数えられなくなって 切り離された 音とリズム 今 この口からは だらだらとしたものしか 出てこなくて 今 この足を動かしても なんのメロディも 流れてはこないでしょう 上りきってしまった と思い込んだら おしまいになっちゃう のよ もっかい 下りましょう もっかい 上りましょう いっぽいっぽいっぽいっぽいっぽ 少しずつ 取り戻していく 境を越えていくんだ。 2003年11月17日(月) 何でもいいんだ 嘘を吐いた あったかいなんてまやかしだ デッサンが狂ってる 突き出したカッターナイフ 流れてるのは血なんかじゃない アイツは血統書つきの犬だ こんなところにあんな場所はない 振り返ったら終わりさ 神様は住んではいない 薄っぺらすぎんだよ 魔法は使えると言われた 片足でじゃんけんをする 2メートルも遠くなる 最後と最期と嘆かれる 手を繋ぐなんて不可能に近い 悪質な感情だけが漂う 杖をついてまで歩くのか 君を殺したい ゆめうつつゆめうつつ 愛しながら愛したまま 真っ赤な木の実 2003年11月14日(金) もう、十年も前の景色を、 思い出していた。 ひょいと、陰に入れば、 そこには、たくさんの木の実があった。 それを、取りあっては、 それを、食べあっては、 遊んでいた、 無邪気な子どもを、 思い出していた。 小さなゆびさきで掴んだ、 真っ赤な木の実は、 たしか、おいしかったんだろう。 たやすく、つぶれて、 服まで、赤の斑点。 口はしに、木の実の皮。 それでも、笑っていて、 もういちど、もういちど。 って、まいにち、 傷だらけになりながら、 木の実を取りに、行っていたのだ。 もう、たぶん、あの林は、ないのだろう。 ひょいと、飛び越えても、 今は、ビルの中へと、吸い込まれなければ。 とりかえさなければいけないものがある。 どこの遠くまで、飛ぶというのか? 2003年11月11日(火) 今をがんばる なんて 言うだけなら タダだ 将来を考えろ なんて 想像(というより妄想)くらい 誰にだってできる どこまで見ればよいのやら 近くを見すぎなのか 今だけじゃ 何もできないのか 遠くを見すぎなのか 明日のことなんて わかりやしないのさ もっと ずっと 先も 手も足も出ないや ちょうどいい距離って どこだ? なんだ? 闇色 2003年11月10日(月) 太陽を隠してしまおう 閉じてしまおう とじてしまおう 始まらないように 終わりがないように 紅葉が 海星に 見えてしまうくらいに もう 暗闇に 狂っているんだよ 落ちてしまおう 這い上がるよりも ずっと楽だからさ 膝をついて 目を覆って 叫び声を昇らせた 太陽を隠してしまおう 閉じてしまおう とじてしまおう その方が ずっと容易いからさ 朝と冬と空 2003年11月08日(土) 白目が黒くなってくよ 食い奪ってくよ 遠い けしき 近くなってくよ 四角い絵画 狭まってくよ ここにだけ 入りこんでくよ ぜんぶ 持ってくよ 千切ってくよ おめめ なくなってくよ すべて 消えて なくなってくよ 武器をもたない子供のままでいい 2003年11月04日(火) 届くふりしてみたり 届かないふりしてみたり 何も悪くはないよ 素直であることで 傷付きやすくて 嘘をつくことでも 内心ちょっとズキズキ どちらで生きようとも ケガだらけの毎日でしょうか 選択など むずかしくて できません 選び抜かれた人間では ありません 不器用にもほどがある そんくらい ふらふらと どちらにも揺れ動く 笑ってられます まだ泣けます バンソコ貼って 治るまで待てます 治らなくても がむしゃらに歩けます 進めます 進めます 武器なしでも 一歩ずつ 行けます そしたら また 2003年11月03日(月) 目を見開いて いっぱい いっぱい いろんなもの 取り入れようと思ったんだ でも 取り入れすぎちゃったみたい 吐き出すくらいに 大盛り 満腹 やっぱ 限度があるんだね ごめんね ごめんね 吐いてしまったりして ごめんね また ここにやってくるよ そしたら また お願いしますよ すこーししたら きっと 君を 取り入れられる |