電話もTVもない場所でくらしてみたいなと思う 人の声は 目の前の人だけ 顔を見てゆっくりと言葉を交わせて 一緒に歌を口ずさめて 同じ空気を吸っていること
誰もいなくていいと思った 誰もいないほうがいいと思った
でも誰もいないのはつまらない 本当は誰かに会いたいのかもしれない 日々雑然としているから 向き合う時間がないだけかもしれない
一日夢の中にいたような 眠気のようなものの中で ぐるぐる夢を見続けていたような 不思議な時間の経ち方で夕暮れを見る かなしいよ かなしいけれど誰もいなくて誰にも告げられない でも誰かに告げれば哀しくはないだろうか いえ、ずっと哀しい、きっと哀しいまま 脳を満たす生ぬるいもの それをきりりと冷やしたり 熱くたぎらせれば どこかが軽くなりそうな気がするのだけれど
矢のように過ぎ去って行ってほしい そして遠くに押し込めてしまいたい 新しく次々と流れ込んで来てほしい そして止まらず溜まらず素早く消え去って欲しい
そんな願望を断ち切れなくて 日付のないカレンダーの 奥底に沈めるジカン
なんだかね やっぱりね そんな気もした どこにも誰もいなくて ただがらんとした 物足りなさ
私すらいない
土の上にいて 土にかがみこんでいる 湿った匂いがして 何かが動いてゆく
掘り返したり 植え込んだり 種をまいたり 植え替えたり
緑の中で種々の作業は 人生と同じ だからテラピー
色々の人の声を聞いていた そんな日々がなつかしい
空の色のようにかわる声を聞いて 誰とわかった日々がなつかしい
いま誰の声もわからない
キミの元気な笑顔を見た 嬉しくなる いつも楽しそうにしているね 前にそう言われていたね その明るさがいいんだね キミは意図していないけれど きっと周りを明るくする 誰もキミを憎めない しあわせ 大切にね
丹念に朝刊を繰れる時間があるのは幸せだろうか 全面の映画広告より 下に並ぶ書籍の広告が好き こんなところで低迷していてはだめだと思う悲しみが ふつふつと沸いてくる
雨の日に濡れて美しいものがある 当たり前のことだけれど
雨の日を嫌っていては 気づかないし見つけられない
見せてくれたあなたは優しいひとだと思います
いつもいつも それをずっと見続けている人が切り撮った一瞬には 優しさが溢れている 見つめ続けた眼差しが見える だからこちらも優しくなれる嬉しくなる
彼方が野心で真似ても挑戦しても かなうわけないよ そこには何も光る空気が見えない
たいした用ではないのにたくさんあって あちこち回って疲れ果てたら 思いっきり甘めのコーヒー 蒸し暑い国の外で飲むような ノスタルジック
一寸 と思って出て 激しい雨にしたたか背中を打たれた 冷たくて痛い 座禅の警策(きょうさく)の快感が甦る
音以上に 強い雨だった
流れはそのままに受け止める 出合うものをそのままに
そこから何かを受けとめよ と 神が置いたものだから
何もない誰もいないという 空っぽの感覚も
久しぶりに会ったひとの 少し高揚した笑顔がまぶしい 新たな充実をみつけたのね 取り残されていくのかな ふとそう感じたけれど わたしはわたし やっぱりわたし 真似る気もないし 自分の本分を正しく果たそうと思う 明日から少し張り切っているだろう
久しく見かけないひと 消えたのでしょうか それとも私の記憶が消したのでしょうか 私のことも消されているでしょうか
ガタンと大きな音を轟かせて そんな風に停止できたらいいのにね
何も云わずとも 周囲に響き渡る音だけで 自分の全てを一瞬に
日が高くなるまで 朝の空気はまだ肌寒い 早く出かける人たちよ 行ってらっしゃい わたしは今日は大きな仕事 心してかかります
自分のことで手一杯なら ひとのことなど手放せばよいのに ちぎれた衣をまとわずに 新しい布を手に入れればよいのに あなた自身のことなのだから
お洒落だけれど薄暗さを感じて ずっと入ったことのなかった小さな店 初めて買い物をした 珍しい形のペンダントトップ 贈った人がとても気に入ってくれた それ以来 前を通るとウインドウの中が明るく見える
あなたの話すことがわからない あなたの興味がわからない 知りたいけれど 一歩近づく勇気がありません
いろんな記念日をもういらないと思った でもこの日は新しいことだから 小さな芽吹きの育つのを待ちたいから あなたに覚えておいて欲しいから それ たいせつにしてください
風向きは突然変わる 雨足もいつかは変わる
澄んだ海の生き物は 小さな白薔薇と 青い森の妖精となる
激しい雨は 守護神 鼓舞する銅鑼 新しいことの始まる日
新しいことの始まる日 躍動を秘めた青い雫 こだわりに縛られず 自由に生きよと
深い青に海の宇宙 澄んだ翠に水の宇宙 静かに誘い込まれる 硝子珠の奥
蜜蜂の羽音が高い 長休みの疲れをとるように 家々のしずかな気配 吹きぬける風
新しいことを考えたい
人はいつから立ち上がって上から謝るようになったのだ 記者連と同じ高さに座していた人達が 連なって立ち上がり その場で上から謝る 茶の間でTVを見る人を見下ろして謝る 誰に対しての謝罪なのだ
あわただしいのは苦手です テキパキさんといわれる部類の人も苦手です 迷惑かけないように気をつけながら 遅ればせながらも後からついてゆく ちょっと 余所見もします あたふた追いかけます 背中ばかり見えるけれど 私はこれでいい テンポの速いのについてゆけないのです
鉢で大切に大きくした花たちを庭に植えます はじめ綺麗でよそよそしくて そのうち少し乱れて前からそこにあったように馴染んで 大きな顔をするようになる そうして打ち解けたなごやかな庭になる そんな庭が一番居心地がいい
|