空中楼閣

2004年04月30日(金) かくれんぼ

 
私は沈んで笑っているから。
さぁ、見付けて御覧なさい。
 
そこに光は射さないから。
私が光る事もないから。
アナタは私の笑い声を頼りに。
さぁ、見付けて御覧なさい。
 
アナタが十数える内に私は。
深く、深く。
 
 
ひとつ。
深く、深く。
 
ふたつ。
深く、深く。
 
みっつ。
深く、深く。
 
よっつ。
深く、深く。
 
いつつ。
深く、深く。
 
むっつ。
深く、深く。
 
ななつ。
深く、深く。
 
やっつ。
深く、深く。
 
ここのつ。
深く、深く。
 
とお。
深く、深く。
 
 
さぁ、見付けて御覧なさい。
 



2004年04月29日(木) 掃き溜めに鶴。

 
昔の自分が詰まった箱を開けた。
それは、小学生の自分の箱。
 
パラパラと、ノートを見る。
およそ学習に関係しない散文の綴られたノート。
拙い字が並ぶのを見て、少し笑う。
それは、少しずつ上達していく。
字を習っていた自分は、昨今より模範的な字を書いていた。
けれど、どこか凝り固まった線で出来ていた。
 
ふと、一つの詩に目が止まる。
『掃き溜めに現れた鶴。』
さほど長くない詩を何度か読み返す。
 
 
嗚呼、あの頃の自分にも見えていたのだろうか。
 



2004年04月28日(水) 赤い月。

 
どうやら今年は赤い月が見られるようで。
 
明け方まで起きているのは造作も無い事。
あとは、迎え入れる心積もりだけ。
 
地球に太陽の光を奪われて尚、美しく輝く月。
たくさんの獣を虜にして、笑いながら沈んでゆく。
 
その時雲が、少しだけ眠ってくれる事を祈りながら。
私は赤い月を待ちます。
 



2004年04月27日(火) 何も無い部屋。

 
私に与えられた部屋は一つではなくて。
今こうして大半の時を過ごす部屋の他に幾つか。
その一つに、私が寄り付く事は無い。
 
その部屋には、何も無い。
薄ら気味の悪い感覚が私を包む。
長く居る事は出来ない。
恐怖にも似た寒気と、畏怖にも似た眩暈が起こる。
 
何故なら、そこには何も無いから。
ある種の完璧な空間が広がるから。
 
私は何だか末恐ろしい物を見たのかもしれない。
あの完全な部屋で。
だから、落ち着かないのかもしれない。
 
あの壁も、広がる直線も。
淀みない真っ白な空間も。
何もかもが私の喉を絞めてくる。
私は、私の部屋に居る事が出来ない。
 
それでも私には、この部屋がある。
ガラクタの寄せ集めでも。
この世の全てがひっくり返ったような部屋。
とても、落ち着く。
 
それでも私はあの部屋に行かなければいけない。
爆弾を抱えたまま。
 



2004年04月26日(月) 今の僕に必要なもの

 
安らかな眠り。
妨げられる事の無い眠りを。
 
理解と手助け。
せめて重荷とならない人を。
 
少しの孤独。
他を閉め出す事の出来る空間を。
 
優しい微笑み。
凝り固まった心を解くような。
 
押し殺した慟哭。
奥底に眠った悲鳴の爆弾を。
 
あの人の唇。
闇すらも愛するような口付けを。
 
清らかな涙。
流せずにいる私の代わりの涙を。
 



2004年04月25日(日) ピカピカ。

 
雷は好き。
今日は、とても強い雷。
家が震えるほど。
電気を点けた部屋が暗く感じられるほどの稲妻。
激しい轟音。
全部全部、大好き。
 



2004年04月24日(土) どうした、どうした。

 
どうした事だ、これは。
何が原因なんだ。
この息苦しさは。
この体温の異常な低さは。
この吐き気は。
この耳鳴りは。
この機能低下は。
 



2004年04月22日(木) 夜雨と夜霞。

 
しとり、しとり、降る雨。
軽く傘を掲げて歩いてみる。
雨の日は、少し暖かい。
もしかすると、桜達は明日、散っているかもしれない。
川沿いに歩いてみる。
向こう側を照らす街灯は明るく。
霞に覆われているのを私に教えてくれる。
まるで煙のような。
その霞に飛び込んだら私は。
もしかして、もしかして。
 



2004年04月21日(水) 橋の上。さくら。

橋の上から川を見るのが好きです。
波とか、反射する光とか、川底の石とか。
川が好き。
石が好き。
橋が好き。
そして其処に在る風が好き。
 
飛び降りようなんて気は更々無いけれど。
きっと、飛び降りても助けてくれる。
時折ふと、わけもなく思い込めてしまうのも事実で。
そんな事は無いのかもしれないけれど。
雰囲気がそう思わせてしまうのかもしれない。
けれど、それはそれで良いとさえ思ってしまう。
 
橋の上を横切る風は周りより少し強くて。
風の強い昨日なんか吹き飛ばされそうな勢いで。
でも、ゴゥゴゥと私を包む風は好き。
聴覚の狂いそうな風の音が周りの音を消してくれるから。
 
 
花冷えの季節、驚く程の強風の中、桜は散りませんでした。
そろそろ空気が温み始めます。
桜前線が私達に別れを告げる頃です。
お花見は、お早めに。



2004年04月20日(火) 深海魚は天使の翼を欲するか。

最近の知的好奇心が向かうのは、深海魚。
そこで生きる意味があるのだろうか。
彼等は何故、そこを住処としたのだろうか。
目を退化させてまで。
鱗を鎧のように進化させてまで。
押し潰そうと迫りくる水圧。
常に切り離せない飢餓の恐怖。
 
それでも、深海を離れない彼等は。
海雪すらも光なき為見る事叶わなくとも。
それでも、生き続ける彼等は。
太古を守り続け、静かに、静かに。
 
見えていても、見る事をしない人間よりは。
変わらぬものに訪れた変化にすら気付けない人間よりは。
 
その、異形すらも。
ずっとずっと、優しい。



2004年04月19日(月) 少し狂う、視界。

左目だけが、上手く機能しなくなる。
チリチリと砂嵐のように。
銀色のノイズが走る。
時に視界の隅で、時に視界を覆い。
ここ数日で現れた変化。
常に在るものではなく。
日に何度か、気紛れに現れるそれは。
大切な物まで消し去りそうで。
 
庇うように機能しだした右目は充血して。
目の端が痛みを訴える。
 
でも、他の人は気付かない。
外側には在り得ない砂嵐を見ている左目に。
濁っている視界を浄化し続ける右目に。
バラバラになって焦点を合わせられない私の目に。
気付かれてはいけない。



2004年04月18日(日) おかたづけ。

ふいに湧き上がった衝動に突き動かされて。
部屋の一部分を徹底して片付ける。
 
時々、ある一部分だけが絶対に許せなくなる。
それからは取り憑かれたように。
徹底的に片付け始める。
 
他の全てが汚れていても構わない。
まるで、その一部分が聖域のように。
 
今回も唐突で。
でも、流れるように心が切り替わって。
 
片付けは無事に終わった。
満足、満足。
 
明日への僅かな不安は片付けられなくても。



2004年04月17日(土) 妙な勘。

肝心な事は何一つ気付かれていないけれど。
 
少し、ドキリとした。
思いがけない一言。
どうして、彼女の口から出たのだろう。
一番気付かないだろうと思っていた。
 
本人は、何の気なしに言ったと思う。
だけど少し、ドキリとした。
不本意にも驚いてしまい、苦笑い。
 
今度会う時は、もう少し慎重になろうと思う。
気付かれてはいけないのだ。



2004年04月16日(金) 気付かれてはいけない。

私の胃が、どんなに拒んでも。
そんな事を気付かせてはいけないのだ。
無理矢理詰め込んでしまえば、吐けないのだから。
自分の血肉として吸収するしかないのだから。
 
騙し、騙し。
 
少しでも食の進むように。
刺激物を多量撒布。
唐辛子、胡椒、ワサビ。
 
胃は拒むけど。
摂取できないわけじゃない。
入れてしまえば、完璧に消化できるから。
一人じゃない時は食べる事にしている。
つまり、十中八九は食べている。
 
食べなきゃ、変だと思われるから。
 
絶対に、気付かせてはいけないのだ。



2004年04月13日(火) 最近の時折。

胃が。
食べ物を受け付けてくれなくなる事。
 
体温が。
ガタンと、ストンと落ちる事。
 
左手が。
暴走を始めてしまいそうになる事。
 
感情が。
激しすぎて眩暈を起こす事。
 
眠りが。
ほぼ一時間毎に自己により遮られてしまう事。
 
体が。
限界を訴えかけてくる事。
 
 
騙し騙し。



2004年04月11日(日) ひんやり、の部屋。

自室の温度は、家で一番低い。
測らなくても解る。
肌で感じる事が出来るほどの温度差。

夏でも、冬でも。
春でも、秋でも。
昼でも、夜でも。

変わる事無く、周りより冷えた部屋。

何が原因なのだろう。

同居人達は訝しんでいる。
外から入ってくる人達は驚く。

誤魔化すのも疲れるので、放っておいている。
何が原因なのだろう。



2004年04月10日(土) 必要とされる、という事

人間という生き物は、必要とされているから存在しているわけで。
必要とされなくなった瞬間、煙のように消えるらしい。
その存在自体が消え失せてしまうらしい。
生きてきた証だけは、ポツンと残るのだとか。
でも、必要とされなくなった人間だから。
残った証に気付く人なんて、誰一人いないわけで。
 
死ぬ事とは違う、消滅。
 
死ぬ事より、ずっと怖い。
 
ずっと恐い。



2004年04月07日(水) 少し早い朝方の事

空を覆う朝焼け
 
空を覆う朝焼けを覆う朝靄
 
前を歩く人は、私が立ち止まると朝靄に飲み込まれていく
 
夜の闇より不気味
 
私は少し、不安を覚える
 
 
少し歩くと建物が現れる
 
毎日の見慣れた建物も、どこか寒々しく
 
不安定にすら見える
 
 
夜の方が、安心する事を確信する



2004年04月05日(月) 耐えろ、耐えろ。

例え殴りかかりたい衝動に駆られても。
物を投げつけたくても。
心の底から怒鳴り散らしたくても。
 
耐えろ、耐えろ。
 
喉が締め付けられるような感覚に襲われても。
左手の自制心が著しく低下しても。
脳内に殺意しか芽生えなくなっても。
 
耐えろ、耐えろ。
 
口を開くな。
目を合わせるな。
外界を閉め出せ。
何も感じるな。
 
耐えろ、耐えろ、耐えろ、耐えろ。
 



 
眩暈さえする衝動を無理矢理押さえ込んで。
小刻みに震え出す左手を宥めて。
 
やっと独りになれた目に飛び込んできた月は。
いつもより大きくて。
美しくて、優しくて、どこか不気味で。
 
 
あのオレンジが、連れて行ってくれたらイイのに。



2004年04月04日(日) 切り替え可能。

自分で引いた暗黙のルールがあって。
それによって時々、身動きが取れなくなって。
目を塞ぐ事も出来ずに。
塞いでも、体に染み付いたそれは私を捕らえてしまう。

そんな時は、自分を切り替える。
出来ない時もあるけれど。

ルールを蹴散らせる自分に。
そんな物に捕らわれる事のない自分に。
全部がまっさらな自分に
初めからルールなんて知らない自分に。

切り替える。
時々は、リセットする。

出来ない時は。
その時は。
限界が来れば自動で切り替わるから。

切り替え可能な自分は便利。
でも、もしかしたら。
他の人は切り替えなくても平気なのだから。
自分は不便なのかもしれない。



2004年04月01日(木) 涙の数と人格形成における比例性理論

例えば、涙の数だけ優しくなる。
そう仮定すると、私は残酷極まりない人間であるのだろうか。
 
例えば、涙の数だけ強くなる。
そう仮定すると、私はこの上なく弱い存在なのだろうか。
 
例えば、涙の数だけ愛を知る。
そう仮定すると、私は。
なるほど、愛など手にする事は不可能に近いのだろう。


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亨 [MAIL]

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