周囲の音を遠くで鮮明に聴きながら 今に舞う花びらに想いを内在する
一重ごと確かに見つめながら 静かに強く新しく
そして今日も 桜の樹の下ですれ違う
気付けば そこは何度目かの春
試すかのように現れた 思いがけない朝に 振動したのは血液のすべて
僕だけが知る時がめぐり そして息をのむ速さで 二つの時が重なったんだ
あっという間の出来事だった
柔軟な冷たさの中に 確かに存在する呼吸を求め 熱は熱によって癒される
扉と鍵
迷路の入り口
立ち止まり知る
軌跡
後方から すぐ隣りをすり抜け 目の前を行く
僕が僕を追い越してゆく 僕は僕を追いかけてゆく
声
手
瞳
歩調
身体
見つめて 見つめられて 今を言葉にする
西に浮かぶは 束の間の夜の吐息
新月が薄目を開ける
夕陽の色を呑んで
覚醒したのは僕
君は尖った時間の神経に 緊張し僕を抱いた
僕の覚醒は君を遠ざけるばかりだった
同じ感触の間で見た夢の数だけ
君と僕の現在の故に
まだ気付かない
忘れ物
それはきっと大事な何か
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