2004年08月21日(土) |
のどの奥のたくあんなまこビビンバ |
口の中を駆け抜けていった思い出 思い出を廻らせると 食道のどこかに引っかかり 記憶のどこかにとどまっているけれど 韓国でもたくあんはたくあんと呼ばれることを最近になって知ったのは そんな記憶を手繰らせるための 仕組まれた仕掛けだったのか まだ石の縁に押しつけられて 肉はジュワジュワ焼け焦げている 遠くへ追いやられたはずの過去が甦る 新たに植え付けられた記憶かもしれず 終わる事なき過去を廻るループ うまく封じ込めたはずが 数十年の時を隔てて甦る
土間でおばあちゃんの手伝いをした 半分に割ったウリの中身をスプーンできれいに掻き出す 種やらずるやら中の柔らかい部分がするするっとそぎ落とされる 中身を出さないといけないウリはまだたくさん残っているから 手際よく少しでも早く終わらせたいものだ 取り損ねた種を何度もスプーンで掻き出すのは面倒だ ウリにへばりついてしまった種はもっと煩わしい 思いっきり力をこめるとスプーンが深く入りすぎて動かなくなる 無理をするとウリがぺらぺらになる 種を残さないように そぎ落としすぎないように 手元にウリの中身だけをするするっと落としていく 樽の中に敷き詰めるようにウリをならべ 塩をまんべんなくふる 次はまた向きを変えてウリを敷き詰める 幾度も幾度もそれを繰り返し ウリが樽いっぱいになるまで続ける 最後に漬け物石をよいしょと載せれば とりあえず作業は終了 緑に光るウリが できあがったら茶色になっているのはなんだかもったいない気がした たくあんを漬ける時は手伝いはあまりしていない だって大根に種なんかないし スプ−ンの出番もないから でも 白い大根がいつの間にか黄色に染まるのは不思議だった たくあんの黄色と奈良漬けの茶色のコントラストがきれいだった 食べるときに 切ってしまえば次々に色と味が変わっていくのがたくあんで 不思議と奈良漬けは色も味も変わらなかった
水着で岩場をうろうろしていたような気もする 泳ぎに来たのか 釣りに来たのか 潮干狩りだったのか 岩陰に見つけたのはナマコだろうと思ったけれど 自信もないし 周りの人に気づかれてしまうから 父親をそっと小さな声で呼んだ けれどもなかなか気づかないので 「お父さん ナマコがいるよ」 最後に呼んだとき 近くのおじさんに気づかれてしまった 後はそのおじさんと僕たちのナマコとり競争になった 家に戻ると 母はいつの間にやらナマコをさばいていた スライスになってボウルの中をただようナマコ 大根おろしと酢醤油と共に出てくる コリコリした柔らかくて固い食感がいい
ビビンバが給食に出たのはいつのことだっただろうか 世界の料理シリーズか何かで食べたような気がする それまで家で食べたことはなかった モヤシとごはんが口の中で何だかモシャモシャして 酸っぱかっただけのような気がする これがうわさに聞いたビビンバかと思ったけど 親子どんぶりや牛丼なんかの方がずっとおいしく思えた 結局その後も我が家の食卓に登ることはなかった 人気の焼き肉屋で石焼きビビンバがいつの間にやら定番メニューになっていた 試しに食べてみることにした 熱い石の中でジュウジュウ焦げる音がするのはおもしろかったが やっぱりビビンバはビビンバだった そこの焼き肉はお気に入りだっただけに なんだか少し熱が冷めたように思えた
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