へい太の日記

2003年05月17日(土) 扉の向こう

ガラス扉の向こう側
小さな女の子を乗せた自転車が通り過ぎる
あの人の横顔が通り過ぎた
どこへいくの
扉を叩いたのだけれど 廊下にこだまが残っただけ
ここには鍵がしてあって 外には出られない

農家の嫁として 村から嫁いだ日
あんたあ大柄で丈夫そうじゃから
うちみてえなとこに来てもらえてほんと助かるわ
姑にたいそう重宝がられ
はよう孫の顔が見てえなあ
夕餉には舅につぶやかれていた日々

あの戦争に連れて行かれたあの人は
二度と戻って来ることなく
身ごもっていたはずの赤ん坊も
農作業のしずくと消えた

実家からはもう帰ってこられえと知らせが来たけれど
頼むから私らあの面倒をみてくれえ 田んぼもあるし
そのまま 家を手伝い 田んぼもした
舅を見送り 姑も看取った 五十年が過ぎた

年を取るにつれて 足腰がよおなってなあ
こねえなふうに 赤ん坊みてえにへえへえするように
家ん中をいごきょおったんじゃ
土間からあがれんから 板をわたしてなあ
風呂にも入れんから ずーっとおんなじ着物じゃったんよ

どーしてもそてえでにゃあおえんときもあったから
そのまあま ほおてあるきょーったら
子どもらあつれた先生にたまたまおおてのお
家までおぶうて帰ってくれたんじゃ

その後 こけえきたんじゃ
ごはんも作ってくれるしお風呂にも入れてくれるし
幸せな暮らしになったわ

今日見た自転車で女の子つれた人が
あの人に見えてなあ
話しょお おもおたんじゃけど
戸に鍵がかかっとってなあ 出れんのんじゃ
戸に鍵がかかっとってなあ 出れんのんじゃ



2003年05月03日(土) 扉の向こう

ガラス扉の向こう側
小さな女の子を乗せた自転車が通り過ぎる
どこへいくの
扉を叩いたけれど 廊下にこだまが残っただけ
ここには鍵がしてあって 外には出られない

農家の嫁として 村から嫁いだ日
あんたは大柄で丈夫そうじゃから
うちみてえなとこに来てもらえてほんと助かるわ
姑にたいそう重宝がられ
はよう孫の顔が見てえなあ
夕餉には舅につぶやかれていた日々

あの戦争に送られ見送られたあなたは
二度と戻って来ることもなく
身ごもっていたはずの赤ん坊は
農作業のしずくと消えた

実家からはもう帰ってこられえと知らせが来たけれど
頼むから私らあの面倒をみてくれえ 田んぼもあるし
そのまま 家を手伝い 田んぼをし
舅を見送り 姑も看取った 四十年が過ぎた

年を取るにつれて 足腰がよおなってなあ
こねえなふうに 赤ん坊みてえにへえへえするように
家ん中をいごきょおったんじゃ
土間からあがれんから 板をわたしてなあ
風呂にも入れんから ずーっとおんなじ着物じゃった

どーしてもそてえでにゃあおえんときもあったから
そのまあま ほおてあるきょーったら
子どもつれた先生が来てのお
家までおぶうて帰ってくれたんじゃ

その後 こけえきたんじゃ
ごはんも作ってくれるしお風呂も入れてくれるし
幸せな暮らしになったわ

今日見た自転車で女の子つれた人が
あの人に見えてなあ
話しょお おもおたんじゃけど
戸に鍵がかかっとってなあ 出れんのんじゃ
戸に鍵がかかっとってなあ 出れんのんじゃ

 


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