初日 最新 目次 MAIL


曖昧な日々。
大槻
MAIL

My追加

2001年07月12日(木)
7/11×別れ

「別れた」
電話の向こうでAは言った。
夏を前にした、じめじめした空気が私にまとわりつく。
今日関東では梅雨明けが宣言されたらしい。
「え…なんで?」
親の目を気にしながら私は尋ねた。
私はその時ちょうど、親の部屋でPCに向かっていたのだ。
「あ〜いや、なんかね…」
心なしか、いつもより抑揚のない声でAは続けた。

『部活との両立が出来ないから』
そうあの好青年は言ったらしい。
私にはそれがただの、むなしい別れの口実にしか聞こえなかった。
いや、そうでしかなかったのだろう。
だけど私には、なんだか信じられなかった。
初めから冷めていたAとは逆に、あれほどAを想っている様に見えたあの好青年の口から、まさかそんな言葉がでるとは予想もしていなかった。

「最低じゃねぇ?」
…まぁ確かに。
逢いたいと言っていたのもあっちだった。
Aはあまり欲もなく、どちらかと言えば尽くしてあげていた。
友達より彼氏を優先し、部活が終わるまで待っていたりした。
しかも、何人もの男に手を出していたのを、好青年に悪いと思って全部手を切ったのだ。
珍しく続いているなぁと、周りの誰もが思っていた。
そして、楽しみにしていた夏休みを目前にして、これだ。

「あたし男運ないんかなぁ…」
今にも泣き出しそうな声。
その割に、直後にAは鼻で笑った。
「あ〜ぁ。また新しい男探そっかな!」
この感情の起伏の激しさには驚かされる。
「あぁ、うん。頑張って」
「T冷めすぎ〜!まぁいーけどさぁ。てかむかつく!男ってやっぱ自己中なんやね〜私もう彼氏作らないでおこうかなぁ。んで、遊びの男だけつないでおく♪本命一人に絞るん、もう嫌やわ!」
一度に喋るAについていけず、私は曖昧な相づちを打つ。
「あ〜。強いね」
いつもなら私ももう少し乗って話を進めるのだが、今日はそういうわけにはいかなかった。
私は親に怪しまれない程度に、Aの話を聞いていた。
Aは少し不審がった様だが、仕方なかった。

そうこうしているうちに、時計は9時半を指してた。
私は慌てて電話を切ろうとした。
電源を入れたままのPCが気に掛かった。
話の途中で、気が咎めたが、電話を切らざるを得なかった。
「ごめんね」

明日はAの話を詳しく聞こう。
雨が降らないことだけを願って、私は受話器を置いた。