馨絵詞〜かおるのえことば
楽しいことも、そうではないことも。

2004年10月14日(木) 金縛り体験記

生まれて初めて「金縛り」を経験しました。
いや、正確には経験しかけたと言うべきか。

とってもとっても眠かったのに何故か寝苦しかったんですね。
暑いわけでもないのに、なにか眠りが妨げられる。
いや、確かに寝ている、だけど意識がある状態。
なんか落ち着かない夜。

熟睡しているときはともかく、稲葉は意識があるときは真上を向いて寝ることはしません。
左右どちらかを下にして体を横向きにします。
なんか嫌なんですよ、仰向けで寝るってのが。
無防備な感じがするというか。

この時は左半身を下にして寝ていました。
左手は枕の下にあり、右手は軽く握って口の前あたりまで曲げて持ってきていました。

   ◆

始まりはよく分かりませんでした。
徐々に体の自由が奪われていきました。
一気にズンッと動けなくなるんじゃなくて、じわり…じわり…と。
はじめのうちは「?」なんですが、起こりつつあることを理解して焦りが強くなってきます。

まずい…まずい……まずい!
この時は意識ははっきりとしていました。
曲げている右手を伸ばそうとし、同時に伸びている足を曲げようとするんですが力が入らない。
もどかしい、ただひたすらに。
手の指先はまだ動きます。
完全に石になる前になんとかしなくては…。

   ◆

石化が進むにつれて、不快な音が耳に響いてきました。
意識はあったのに、この音に関しては記憶が曖昧でうまく表現ができません。
ただ、不快で恐怖な音でした。
ホラー映画で化け物の気配を表現する音とでも言いますか。
化け物がジャーンと出てきた後の音ではない、その少し前の段階の音。

それがだんだん大きくなってくる。
いや、近くなってくる。
壁の向こうにあった音が、稲葉の部屋に入ってきた瞬間を認めました。

自由が利かなくなったときはまだ冷静でした。
体が眠っていて頭だけが起きているんだ、と科学的(?)に状況を把握していました。
しかし音が近づいてきたら、もうそんなこと言ってられなくなりました。

音が人に与える恐怖というものは侮れないものがあります。
ホラーの演出で音に頼るところが大きいのは非常に理にかなっています。

   ◆

ナニかが稲葉に忍び寄っています。
ここですべて封じられてしまえば、何をされるか分かりません。
強引に冷静になって、いちど体の力を抜きます。
そして、せーのぉッ! で大暴れをしてやりました。

振り切りました。
すごく重かったけれど、振り切って自由をもぎ取りました。
奇怪な音ももう聞こえません。
終わりました、すべてが。

疲れた。
ものすごく疲れた。
しかし、俺は勝ったぞォー的な、俺は自由だァー的な心地よい解放感もまたあって、すんなりと、そして今度はぐっすりと眠ることができました。
朝の目覚めはいつもと何ら変わるところがありませんでした。
ふーう。

体が動かなくなることについては理屈が利くから良いんですが、音に関しては正体が掴めないままです。
多分、恐怖した稲葉が勝手に作った音なんでしょうね。
ほら、金縛り体験談って「足音がした」とか「鼻息が耳元でした」とか付いてくるじゃないですか。
そんな予備知識があったから、自己演出(それも過剰な)しちゃったんだろうな。
そんな稲葉自身がとても口惜しい。

さて、この日記を登録したら稲葉は布団にもぐります。
平和な夜が来ると良いな。


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稲葉 馨

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