馨絵詞〜かおるのえことば
楽しいことも、そうではないことも。

2002年11月04日(月) いつも…いつまでも…

はやいもので芸祭も千秋楽です。
いやいや、芸祭生活にもやっと慣れてきたというのに。

この日、我らがべディックの12番教室受付の前にかわいいクマさんたちが現れました。
彼らの名は「のんびりオールスターズ」。

今年の7月にべディック前期芝居企画として上演した『精一杯にのんびりと』の登場人物を、箱殿がクマさんにデフォルメして縫いぐるみにしてくれました。
なんとか芸祭に間に合わせようと、連日深夜まで作業をしてくれました。
箱殿、ありがとう。
衣装なんかも忠実すぎるほどにきっちり再現されています。
職人さんか、あんたは。

ところで、現れたオールスターズは7人(匹?)。
「のんびり」をご覧になった方はお気づきと思いますが、登場人物は6人。
…? 勘定が合わない…?
実はね、主人公の由利子さんの亡きお父さんが加わっているのです。
お父さん、稲葉をモチーフとしたクマさんで復活。

これまで稲葉、写真・映像を撮られたり、似顔絵を描かれたり、童話に出してもらったりしたことはありましたけど、縫いぐるみとして創られたのは初めてです。
嬉しいなあ。
箱殿、この稲葉ベアは完成まで内緒にしていたかったらしいのですが、製作状況を尋ねた稲葉に見せたメモの中にしっかりと書かれてました。
その時も相当嬉しかったものですが、でもやっぱり出来上がったベアを目の当たりにするとまた格別です。

稲葉個人としても、また企画長としても最高の思い出が出来ました。

   ◆

ここまでしてくれる後輩がいるなんてね。
やっぱりね、前期にお芝居を打ち立ててよかった、と思うのですよ、あらためて。

これまで稲葉、べディック内外でいろんなお芝居や映画に携わってきて、
その全てに抱えきれないほどの思い出があるわけですが、
「のんびり」にはそれらとは違う何かがあります、確実に。
いつまでもいつまでも大切にしていきたい。

稲葉は過去にこだわります。
すごーくこだわります。
辛かったことであってもこだわります。
楽しかったことなら尚更です。

過去をね、過去にしたくないのです。
いつも、いつまでも、現在あるものとして隣に置いておきたいのです。
無理であると知りながらも。
写真や当日パンフ、チラシを丁寧に保存しているのは、そんな願いの表れです。

いつまでも昔に捕らわれて…ってお思いになりますか?
違うの。
稲葉の場合、それとはすこし違います。
過去にこだわるのと、過去に縛られるのは違います。

過去が大切だから、好きだから、そんな素敵なコレクションがもっともっと欲しいから、次の出会いを求めてまた走れるのです。

たった1つの思い出を美化して、そこに逃げ込んで何も出来なくなっちゃうような無力な人間とは違いまっせ。
そうなったら、どんな楽しい思い出も、結果的には不幸の元凶になってしまいます。
写真で笑ってる人たちが泣いちゃいますね。

本当に素敵な思い出は、また次の思い出を目指すエネルギーになり得る物のはずなのです。
そんな思い出なら、稲葉はいつまででもこだわりつづけたい。
抱きしめたい。

   ◆

芸祭3日目、「NORI−MIX」も「劇団喜納一人」も最高の観客動員を記録しました。
NORI−MIXなんて10時30分なんて不利な時間なのによ。
きっと、廊下で楽しそうにしてたクマさんたちがお客さんを引っ張ってきてくれたんだね。


ほら、楽しかった思い出は、次の楽しい思い出を運んでくれる。


この芸祭ででてきた沢山の笑顔と泣き顔が、次に何に繋がるか、稲葉は今から楽しみです。
「のんびり」くらい大きな思い出を、沢山たくさんストックしたい。
心の思い出の許容量は無限大だと信じています。

   ◆

去年の芸祭打ち上げで会長挨拶として言ったこととかぶりますがお許しください。

芸祭のような大きなイベントが終わると、人間誰しもちょっとした虚脱感に襲われます。
自分の中のもやもやしたものが、途端に大きく見えたりして焦りが生じます。
そんなとき、人は迷走します。暴走します。
しばらくは心と身体のメンテナンスに励んでください。
次の作品を創ることが俺流のメンテナンスだって人はそれでもいいから。

ただ、変な答や間違った答に突っ走るのだけはやめてください。
今は答を出すときではありませんよ。

なーんてさ。
へへ、偉そうに言ってらあ。
実はみんなに言ってるようで、稲葉自身にも自戒として言ってるんです。
どうやら心にもサイクルがあるようで、稲葉は毎年、芸祭中、あるいは直後に怒鳴ったりあらぬことを口走ったりしています。
その度に反省はしているつもりなんですけどね。

今年もすこし、迷走しかけてしまいました。
うん。
でもね、今はもう落ち着いたから。
大丈夫。

ビギナーズのときに「(失敗してもいい)だってビギナーズだもん」というフレーズを毎年言ってる、みたいなこと書きました。
それと同様「心と身体のメンテナンス」ってのもここ4年言いつづけています。
少しは成長しているのかな。


さ、大復元して打ち上げしたら、また授業が始まるよ。


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稲葉 馨

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