2002年10月23日(水) |
役者じゃないとしたら |
地元をぷらぷら歩いていたら高校時代の恩師である稲葉先生と出くわしました。
稲葉先生に関しては『馨絵詞』の中で何度か書いてきました。 鬼塚先生より川籐先生よりも強い熱血先生です。 クラスメートの中には鬱陶しがってるのもいましたが、稲葉はこういうまっすぐな先生が大好きでした。
久しぶりに会ったとき、向こうの方から声をかけてくれました。 先生って毎年何百人という生徒と出会っては別れを繰り返しているわけですが、昔の生徒のことってどれくらい覚えてるものなんでしょうかね。 稲葉先生は稲葉のことを(ああ、ややこしいなあ)ちゃんとしっかり、住んでる所まで覚えていてくれました。 普通の先生と生徒以上に強い繋がりがあったのは確かですが(誤解を招きそうで怖い)、にしても嬉しい。
今、たぶん29か30歳。 スーツにリュック、派手なサングラスといういでたち。 顔が(形ではなく、な)稲葉ととても似ています。 因みに普段の稲葉の髪型は稲葉先生をモデルにしています。
若々しさは変わっていませんでしたが、目線が低くなったように感じました。 高校卒業してから稲葉は身長はさほど伸びていないはずなのに。 やはりもう「先生と生徒」ではなくなったということなんでしょうか。 先生は稲葉の前ではもう教壇から降りてしまったのですね。 それが少し寂しい。
でも対等な立場になりました。 対等というとニュアンス的に違うのですが。 「先生と生徒」から「兄貴分と弟分」みたいな。 それがとても嬉しい。
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稲葉先生と稲葉をつなぐものの1つにお芝居があります。
先生は中学高校(母校は中高一貫制)の演劇部「劇団こぎと」の顧問です。 稲葉がこの劇団に入団したのは高校2年生のとき。 前年に立ち上げたばかりで当時はまだ同好会でした。 日芸でいう未公認団体だったわけですね。 入団し1公演打っただけで引退になってしまいましたが、それまで引きこもり気味で他人との関わりが苦手だった稲葉は大きく成長できました。 劇団こぎとは稲葉の卒業後まもなく、学校公認となり現在も続いています。
先生は古典担当でした。 高校1年で先生と出会い、それまで大嫌いで苦手な科目筆頭であった古典が一気に好きになり、大好きで得意な科目筆頭になりました。 勉強でここまで変えてくれる先生なら…と飛び込んだのが劇団こぎと。 先生は稲葉の人生も大きく変えてくれました。
それまでは休み時間、1人で本を読んでるだけの暗い男だった稲葉ですが、劇団に入って視野が広がり、文化祭の実行委員までやったりしました。 芸プロもしましたけど、高校でも同じようなことしてたのね。 人って変われるんですね。
稲葉先生は今年も、大勢いる元気な劇団員のわがままを支えるために走り回っていました。
もしも稲葉が役者じゃない職業に就くとしたら、それは間違いなく先生。 恩師といわれるような先生、 人生を振り返ったとき、曲がり角で笑ってくれているような先生。
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