馨絵詞〜かおるのえことば
楽しいことも、そうではないことも。

2002年07月05日(金) 『のんびり日報』熱闘編〜緒戦

過去2回、今の時期にストアハウスで芝居したときはどちらも天気は雨模様だった。
今年は違った。
太陽が出てくれた。
まぶしすぎて暑すぎた。
ふう。

集合時間よりも30分早く到着。
たしかに寝不足だけど、楽しくて楽しくて一刻も早く現場に行きたいのだ。
残りわずか。
楽しめるところは遠慮なく楽しんでおきたい。

   ◆

守谷殿がスチール写真を取る中、2回目のゲネ。

稲葉の隣では熱海殿が照明オペレーターとして卓の前に座っている。
彼女は仕込みの初日にいなくて、稲葉は正直不安であったが、いるときにはけあま殿や守谷殿の話を熱心に聞いていた。
けあま・守谷殿がバックに付いた状態ではあるも、なんとか1公演こなせた。

ゲネ終了。
もう小屋に入ってしまうと演出として言うことはほとんどなくなってくる。
単に大将として「頑張れ」をいろいろ言葉を変えて言うだけだ。
素直な役者の方が、こんなときは気持ちを乗せやすい。

昼食。
たいていマクドナルドかampmかとメニューは狭い。
だが飽きないのはなぜだろう。
劇場の雰囲気って凄い。

ご飯を買ってきてストアハウスの階段を上る。
4階ロビーのつもりで3階の漫画喫茶「たんぽぽ」に突入した。
思わず店内で「違えっ!」と叫んでしまう。
なんだかなあ。

   ◆

客入れの時刻が近づく。
舞台上で発声をする。
ついで気合入れ。
全参加者を舞台上に乗せ、手を一つに重ねて…。
稲葉としてはこれがないと芝居が始まらないのだ。

うっしゃあ。

ブース(音響・照明操作基地)内から本番直前の役者の様子を眺める。
気合入れの甲斐あって、なかなか高いテンションになっている。
よく喋るしよく動く。
緊張が垣間見えて面白かった。

   ◆

稲葉のいるブースのすぐ前をお客様が通る。
身を乗り出すとずらりと並んだ後頭部。
随分長く芝居をやってきたがこの絵は初めてだ。
想像していたよりもずっと新鮮だった。

決まったタイミングで決まった曲を決まった音量で流す。
ただそれだけのことなのに、手から流れてくるこの汗は何だ。
フェーダーに置いた手が痛い。
ただ置いていただけだと思っていたのが、相当力が入っていたのか。

音響の入るところはそっちに意識が行くが、そうでないところはお客さんの反応を見つつ、芝居を観る。
お客さんが笑ってくれると稲葉もまた笑ってしまう。
役者の演技が気に入らないと、扇を握る手に力が入る。
稽古場ならあーしろこーしろ言えたものが、今はひたすらに見守るしかない。

   ◆

終演後、ブースの中でぐったり。
とりあえず、初日を終え、どっと安堵感が包む。
やっとこロビーへ降りていくと役者がお客さんと話していた。
このときの役者は本当にいい顔をする。
本番とはまた違ういい顔をする。

残り2日・4公演。

帰り道、また電車を寝過ごす。


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稲葉 馨

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