読書日記

2004年09月20日(月) 益田勝実・編『南方熊楠随筆集』(ちくま文庫)、読み終わった。

益田勝実・編『南方熊楠随筆集』(ちくま文庫)、読み終わった。

矢吹義夫・日本郵船会社大阪支店副長宛の書簡「履歴書」と松村任三・東京帝国大学植物学教授宛の書簡「神社合祀問題関係書簡」の間に十二編の民俗学論文・エッセイをはさんだ豪華な熊楠アンソロジーである。

今回、特に最後の「神社合祀問題関係書簡」が強かった。
その舞台である熊野といえば最近世界遺産に選ばれたばかりだが、人にも土地にも歴史あり、と改めて実感した。

その原初のままを思わせる風景が実は神社合祀による樹木伐採や自然破壊の果ての姿かもしれないのだ。

官やら役人やら、はたまたそれらの寄生虫的やからが跋扈して自然や森林・幽山さらに前時代から残る各地の神社を「合祀」という大義名分のもと破壊尽くした、あるいは破壊し尽くそうとした。

熊楠の怒りや困惑、無念の気持ちがよく伝わる刺激的な文章だった。
明治の末に書かれたものが現代的な意義を持ち得ていると思う。

いまだによく似たことが近所でも遠所でも行われている。

ところでこの文庫は、表紙を折った裏に熊楠の写真と著者紹介文がせっかく載っているのに、熊楠が「1967年和歌山県生まれ」に誤植されている版です。
(一九九四年一月十日 第一刷発行)


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