2004年09月06日(月) |
幸田文『月の塵』講談社文庫 |
幸田文『月の塵(幸田文随筆集)』(講談社文庫1997年5月15日第1刷発行)読み終える。読み始めたのが8月18日。ほとんど毎日少しずつ読んできた。 一気に読むのではわからない味わいというか面白さが見えてくるような気がする。 だらだらつきあうこともよい場合がある。 幸田文入門編としても応用編としても推薦できる充実した随筆集である。
表題の「月の塵」は花鳥風月の「月」を表しているのは当然として、あのアポロが着陸したという「月」も意味している。
「月には、親の代、そのまた親の、ずっとずっと前の代から、いろんな事柄を埋めてきたようだ。アポロは記念板を置いてきたというけれど、それは今日のはなし、私たちは昔々から、あそこへさまざまな無形の記念をうめている。たぶんそれらは古びて、塵になって積もっているのだろうーーいくとせ散らぬという月の塵に。 だから、アポロだといっても、そう急にかえた思いかたはできないのである。」 (71頁「月の塵」の終わりの部分を引用) 生前の単行本未収録の文章をいわば落ち穂拾い集。まさしく随筆集と呼ぶにふさわしくテーマが多岐にわたっていて、読みごたえは十分である。 1961年から1986年までに発表された五十八篇の文章から成る。
巻末の解説は「五官の教え」と題して森まゆみが大絶賛の文章を書いている。 「そして幸田文に限って、残っていた物に福があった。」 (365頁から引用。)
カバーデザインは菊地信義。カバーは幸田文の着物から。 巻頭写真2頁。「1964年11月、東京・小石川の自宅書斎で」と「1964年11月、ふたりの孫と庭で」のモノクロ写真が2枚。 (単行本は1994年4月講談社刊)
筆者「幸田文」について
1904年(明治37年)生まれ。1990年(平成2年)没。 小説家であり随筆家である。 1947年父幸田露伴没。
奈良法輪寺三重塔再建に積極的に協力した。
(*今回はとりあえずこれだけ)
|