読書日記

2004年09月04日(土) マーヴィン・ピーク『タイタス・グローン』創元推理文庫

やっと読み終わった。およそ1ヶ月は読み継いできて最後の646頁に至った。「ゴーメン・ガースト」三部作の第一部はゴーメン・ガースト城を統べるグローン伯爵家に待望の世継ぎタイタスが誕生し、ある陰謀の予期せざる結果として七十七代城主となるまでの約一年間に起きたさまざまな出来事と関わった個性的な人物たちと鳥や猫をあますところなく描き尽くした。
視覚的に豊かなイメージ、つまり優れた映像の数々は超弩級である。
人工的な映像美を追い求める現代にこそふさわしい。
個性的というよりもいっそ異常ともいうべき登場人物たちが超巨大な断崖・巌のゴーメン・ガースト城の中と周辺でうごめく人間ドラマの方も禁断の味わいに満ちている。
『指輪物語』とは全く異なる次元の幻想物語はとんでもない幻想世界でのハードな物語はもちろん傑作だった。
1985年4月19日初版を何回かの引っ越しにも見失うことなく持ち歩き、今回やっと読み終えることができ、とてもうれしい。
最近気がついたのはこの『タイタス・グローン』をほかに三冊持っていることだった。長の年月の途中で迷宮にさまよい、第一部と第二部の題名の区別がつかなくなったのだろう。第二部の『ゴーメン・ガースト』のつもりで買ったのだ。
肝腎の次に読むべきその『ゴーメン・ガースト』が見当たらない。しばし物置をさまよったが発見できず。第三部の『タイタス・アローン』は二冊見つけた。
『ゴーメン・ガースト』を読むのはいつのことやら。

なお、巻末の解説は「ピークあるいは幻想からの目覚め」と題して当然のごとく、荒俣宏が書いている。
翻訳者はこれももちろん、浅羽莢子(あさばさやこ)である。

著者「マーヴィン・ピ−ク」について

1911年7月9日、中国の江西省に生まれる。1922年にイギリスに帰る。
1931年、20歳でロンドンの画廊で個展を開く。
1939年『スローターボード船長』1940年『木馬に騎って』を出版。
1946年『タイタス・グローン』執筆。出版のあてはなかったが、たまたま談話したグレアム・グリーンの仲介によって、グリーンが影響力を持つ出版社エール&スポッツウッドから刊行される。
1968年11月、病死。
1969年4月、『タイタス・グローン』のラジオドラマ放送。ピークと『ゴーメン・ガースト』は知られ始める。(*荒俣宏の解説に基づく。これでは簡単すぎるので徐々に補足していきたい。)

翻訳者「浅羽莢子」について

東京大学文学部卒業、英米文学翻訳家。アン・マキャフリィ、キャンプ&プラット、タニス・リー、ヴィンジなど翻訳書多数。(*本の訳者紹介に基づく。ここも徐々に補足したい。)


 < 過去  INDEX  未来 >


イセ [MAIL]

My追加