2001年08月01日(水) |
山田風太郎の短編ミステリーを繙く。 |
山田風太郎の「鬼さんこちら」「目撃者」「跫音」を読む。 光文社の山田風太郎ミステリー傑作選3「夜よりほかに聴くものなし」全13遍のうち最初の三作である。事あるごとに奥さんではないかと身元不明の死体の検分を求めに現れる稲垣刑事に音をあげる小早川武史。可憐な花売り娘の嘘で絶望に突き落とされるタクシー運転手、関口長五郎。逆上して殺人を犯し、勝手に破滅してゆく渋川十作。 いずれも笑えない皮肉な結末を迎えるが、骨太のブラックコメデイである。名前、仕事、家族などを持ち自分の人生を生きる男たちがあがくほどに地獄に落ちて行く皮肉な話である。今から45年ほど前で、作者が三十代半ばころの作品。まったく古びていないことに驚く。 ほかに「始祖鳥記」少し進む。邪気のない兄弟。「クリスマスのフロスト」も少し。23才の若い刑事が赴任して来るあたりまで読んだ。 最近の個人的ニュース。あの「神異伝」が文庫化され、今度は完結するという。ノベルス版の時は、5冊目で完結すると作者が宣言したにもかかわらず、5冊目は出ず、未完のまま。今回は完結編を出してほしい。どんな話かはもう憶えていないのだが。
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