読書日記

2001年07月25日(水) 北村薫「リセット」と辻邦生「微光の道」を並行読書。

 北村薫「リセット」(新潮社)、辻邦生「微光の道」(新潮社)を読み始めるが、野暮用でなかなか先に進めない。「スキップ」はテレビドラマにもなり、その評価はある程度決している。タイムスリップ物というより普通小説といった方がいい。あまりにも達者な書きっぷりでひとつの理想的作品が作られたと思ったくらい感動的な物語だった。次の「ターン」は今一つの感じがした。今度は虚構の度合いが強く感じられ、設定に納得するまでに時間がかかった。「時と人」三作目の「リセット」をまだ18頁しか読んでいない。時代は過去。どうやら第2次世界大戦前後。若い女の子が語り手であり主人公で獅子座の流星群を父親と一緒に目撃したことが重要らしい。なんとなく少女趣味を連想させる語り口で、思わせぶりでもある。一気に100頁は進めそうな心地よい文章だが、残念ながら中断。
 「微光の道」は先だって亡くなった辻邦生のエッセイ集。「私の好きなミステリー・ベスト5」とか「私の好きな文庫本ベスト5」にまず目が行ったが、巻末の佐保子夫人の「字を書く手・・・・・あとがきにかえて」が良い。辻邦生の最近までの過去を語り、辻邦生が原稿用紙に向かって文字を書き継ぐ様子や街角にたたずむ姿を見事に蘇えらせている。夫人もまたすばらしい書き手である。
 その一節「通夜の晩には、森の暗い木々を透かして満月が昇ってくるのが見えた。」辻邦生は最後まで美しい場面を演出したということか。
 以上、過去が現在を印象的に染め上げる話として。
 「フォーカス」を廃刊するくらい経営が大変らしい、両方とも新潮社発行の単行本だった。


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