読書日記

2001年07月14日(土) 恩田陸「ライオンハート」は情熱的構成。

 この話は古本屋に合う。恩田陸の「ライオンハート」(新潮社)。時空と肉体を超えた純粋な魂の放浪のラブ・ストーリー。
 この作者もどんな陳腐な話も心躍るような魅力的な物語に変える錬金術師だ。かつてアガサ・クリスティについてもそう思っていたことがある。犯人探しの話でなくてもその語り口と登場人物の存在感で十分に楽しめた。ロバート・ネイサンの「ジェニーの肖像」フィリパ・ピアスの「トムは真夜中の庭で」を思い出したが、「ライオンハート」はより複雑でいいとこどり総集編というおもむき。構成的にも視覚的にもより洗練されたおしゃれな物語である。
 構成の点では、結末のつけ方は「トムは真夜中の庭で」を連想させる。さらにさだかではないが福永武彦の「風土」あるいは「海市」もしかしたら「忘却の河」のいずれかと共通しているようなのだが。


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