xxxxxx 表面張力(仮)

虚実入り乱れても記録
20010802--



2006年04月03日(月)

花散らす

 雨が降ったかと思ったら、次の日は風が吹き荒れている。
 窓の向こうでは桜の花びらがくるくると風に乗って舞っている。舞い狂っている、とでも言えるくらいに。天気はいい。青い空を背景にして、淡い桜色のそれはくるくると舞い狂う。
 花が散っていく。


 私が生まれ育ったのは桜並木のある川辺で、だから桜の花にはどこか思い入れがある。犬の散歩のときに、土手を歩いていて振り返ると、どちらかというと汚いはずの川面に青空と桜が映っているのが見えた。
 もうその風景は失われている。

 大学の正門へ向かう道には桜並木があった。
 はらはらと散りゆく桜の下を歩いて、どこか華やいだ明るい気分になった。もうその頃には、失ったものもあったけれど、それでも、桜色に染まった空気に包まれているとそれを忘れられるんじゃないかと自分をごまかせた。

 大学院の頃は、桜を見に出かけていった。
 隣にいた人はもう遠い。その遠さになれるまでに数年かかった。


 夫は桜で有名な場所に暮らしていたせいか、近所の桜にはそう気を向けない。結婚して一、二年目の春は手を繋いで散歩に出かけたりもしたけれど、忙しい夫にその余裕はないようだ。ただ、二人で買い物に出たときなどに桜の下を歩いて、咲いているねと笑いあう。
 のどかに、ただ平凡に、二人で笑う。
 結婚し、そんな日々を過ごして丸三年が経った。


 時間は経つ。
 どうしたって時間は経つ。
 それは残酷なときもあるけれど、それでもたった一つの救いだとも思う。

 花散らす風が吹き荒れている。



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