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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
BS歴史館;日本を知らしめた男

先週の水曜日3日20:00〜21:00のNHK BSプレミアム「BS歴史館」は、「伊能忠敬;日本を知らしめた男」でした。
この番組は日本史や世界史上の人物について、その功績や人となりを3人のゲストが語る番組、3人のゲストはそれぞれに、異なった切り口からその人物を語ることの出来る方が登場。

伊能忠敬は、19世紀初頭に幕府の命で日本各地を測量し、初めて日本列島の形を明らかにした大日本沿海輿地全図の作製者。
今回のBS歴史館は「日本史」分野のお話だな…と思っていたところが、あにはからんや世界史それも当時の極東進出を狙っていた欧米列強側の目がから見ると、大変おもしろい「世界史」分野のお話であることが、見終わってみてわかりました。
これ19世紀初頭の海洋小説をお好きな方にはけっこう楽しめる内容ではないでしょうか?

NHK ネットクラブ 番組詳細
https://pid.nhk.or.jp/pid04/ProgramIntro/Show.do?pkey=001-20121004-10-14929&pf=f

再放送が今週金曜日の10月12日(金)朝8:00〜9:00
NHKオンデマンドでも放映していますので、今すぐご覧になることもできます。

NHKオンデマンドBS歴史館
http://www.nhk-ondemand.jp/program/P201100075800000/#/0/0/

伊能忠敬のサブタイトルは「日本を知らしめた男」です。その、「知らしめられた相手」は誰か?
まずは日本人。それまで日本人は自分が住んでいるこの日本列島がどういう形をしているかを正確には知らずにいました。
この史上初の海岸線地図、は、藩毎に分かれていた当時の日本人に初めて「国」の意識を与えた、と歴史学者は言います。

そしてもうひとつの相手が、当時極東進出を狙っていた欧米列強。
大日本沿海輿地全図は彼らに、当時の日本の技術水準の高さを知らしめた。「これは簡単に植民地化できる相手ではない」、と欧米列強に対応を変えさせた原因のひとつになった、と言うのです。

このあたり、当時の欧米事情を知らない人には今ひとつピンと来ないかもしれないのですが、当時の英国海軍モノを読みなれている私たちから見れば「あぁなるほど!」と、大きくうなづけます。
伊能忠敬が測量を開始したのは1800年、大日本沿海輿地全図が完成したのは忠敬の死後3年の1821年。
英陸地測量部Ordenance Surveyが最初の地図を発行したのは1801年ですが、当時の帆走軍艦が航海先のろくな海図も地図もなしに苦労していたのは、皆さんもよくご存知と思います。

いや正直な話、当時の艦長の立場で見て、インドの先のはるかファー・イーストで、緯度も経度も入ったあんな立派な地図が自力作成されていることを知った時、彼らがどれほど驚愕したが、容易に想像できてしまいます。

私は2007年にエストニアのタリンの海洋博物館に行った時に、エストニア人で当時ロシア海軍の艦長としてロシア人初の世界一周航海をしたアダム・ヨハン・フォン・クルゼンシュタインの航海記を見たことがあるのですが、
クルゼンシュタインは1803〜04年にかけて日本近海を航海し、それも2〜3度日本列島を周回して、海上から地図を作ろうとしているのですが、これがけっこう不正確なんですよね。
伊能図が作製されていたのは全く同じ時代。まぁ鎖国ゆえに日本に上陸できなかったクルゼンシュタインの地図が不正確なのは致し方ありませんが、あの正確な地図を見てしまったら彼らが驚愕し「こいつは侮りがたし!」と思うのは至極当然だろうと、

この番組、もうひとつ面白かったのはゲスト解説のお一人天野祐吉氏が説かれた「隠居パワー」のすごさ。
伊能忠敬が江戸に出て天文学を学び始めたのは家業を子供に譲って隠居となった50才。地球の大きさを計算するために蝦夷地の測量に出たのは56才。
地球の大きさを計算するために北海道まで行く…などということは、隠居の道楽でもなければ許されない。
隠居の道楽だからと好きにさせてもらった結果が、正確な蝦夷地地図という形を表したことで、幕府はこの「道楽」の重要さを知り、沿海輿地全図という国家プロジェクトが動き出すことになりました。
「隠居の立場で、一見ムダに見えるようなことを、ただ好きだけで一生懸命やる」という余裕が、社会には重要なんですよ、と天野氏は仰る。現代のような余裕のない世の中では特にね、と。

いやなんか、将来に夢の持てる一言でしたね。
つまり隠居になれば「ムダに見えるようなことを、ただ好きだからと一生懸命やっても大目にみてもらえる」ってことなのね。
べつに世の中の役にたたなくても、害にさえならなければ隠居の道楽と許される…と。
今はネットがあるから、べつに伊能忠敬みたいに潤沢な隠居料がなくても、安価に好きなことが出来るじゃないですか?そう考えると今から定年退職後が楽しみになったり…いやそれまでにまだまだ年金料を収めて、老後資金も貯めなければいけないんだけれど、そして私はもう60才で年金がもらえる世代じゃないんだけど…それでも好きなことやり放題が許されると思ったら、将来に夢があるような気になるじゃありませんか?

ところで、BS歴史館のページを探している途中で見つけたのですが、
今週水曜10日の「追跡者ザ・プロファイラー」はコロンブスなんですね。

追跡者 ザ・プロファイラー  「コロンブス“夢をかなえる力”」
BSプレミアム  10月10日(水)午後9:00〜9:59
「絶体絶命のピンチ続きのなか、彼の類まれな好奇心、洞察力、忍耐力の秘密はどこに?」
…って、ちょっと面白そうです。詳細は下記。

NHKBSオンランライン・歴史文化
http://www.nhk.or.jp/bs/t_culture/


2012年10月07日(日)