Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
アラトリステ(原作)
アルトゥーロ・ペレス・レベルテの「アラトリステ」 7月末に単行本が出たとMさんのブログで教えていただき、本屋で入手。 ごぞんじの方が多いと思いますが、この作品ヴィゴ・モーテンセン主演で映画化されて、9月のトロント映画祭でお目見えです。
1620年のスペイン・マドリッドを舞台にした歴史小説…というより時代小説。 私はこの作家、スペインの池波正太郎だと思いました。 当時のマドリッドの街の雰囲気を実によく伝えてくれています。池波氏の小説に江戸の風情を感じるように、アラトリステには当時のマドリッドの空気があるのです。
またこの作品は、ちょっと古風な冒険小説の味わいもありますね。 主人公のアラトリステは、その剣の腕を買われ雇われ仕事も引き受けますが、彼の中には歴とした彼なりの道徳律があって、それに背くような行動をとることはありません。 その見事なまでの自分律がすがすがしい。 それは不器用な生き方ではあるけれど。 時代を超え、国を超え思い出すのは、ギャビン・ライアルの「深夜プラス1」の主人公カントン。 「仕事」に対し自分律を貫く姿が同じです。
これが日本の時代小説であれば、そのふるまいに武士道であるとか、卑怯なふるまいはしないであるとか、何らかの理屈がつくのでしょうけれど、 寡黙なアラトリステはそれに名前をつけようとはしませんし、それはまた騎士道と呼ばれるものとも異なるような気がします。 この小説の魅力はずばりディエゴ・アラトリステというキャラクターの魅力でしょう。
ただしストーリーそのものはかなり淡々と進みます。 これをそのまんま映画化したら、かなり地味な映画になるのではないかと思いますが、いかがでしょう?
2006年08月19日(土)
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