Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
国王陛下の竜テメレア(H.M.Dragon Temeraire)
英国の三大新聞のひとつザ・ガーディアン紙の書評に紹介された、とある小説をご紹介します。
ザ・ガーディアン紙書評 http://books.guardian.co.uk/review/story/0,12084,1685073,00.html
ナポレオン軍はヨーロッパ大陸を蹂躙していた。イギリス海峡沿岸のフランス駐屯地には侵攻を狙うフランス軍が準備を整えていた。 そのころスペイン・マデイラ島の沖合でウィリアム・ローレンス艦長のリライアント号は、フランスのフリゲート艦を視認した。 そのフリゲート艦の甲板には巨大な卵(!)が据えられていた。それは即位したばかりの皇帝ナポレオンへの中国人からの謹上品だった。
フリゲート艦を拿捕し卵をも手にいれたローレンスだったが、リライアント号がイギリスに帰港する前に卵が孵化してしまった。 卵からかえった竜には名前が必要だ(ほんとうですか?)。そこでローレンス艦長は竜にテメレアと名付けた(あぁどうしてこの名前を…)。 だがこの生き物は海軍士官としてのローレンスの実績を破滅させ、その人生を完全に変えてしまうことになる。
Naomi Novikのこの小説には、スティーブン・キング、アン・マキャフリイ、テリー・ブルックスから、Novikをスザンナ・クラークやパトリック・オブライアンに比す献辞が寄せられているが、そのような献辞を読むまでもない。 マキャフリイを引き合いに出すまでもなく、Novikの描くドラゴン、特にフランスの竜とイギリスの竜の空中戦の描写は、Novik独自のものである。 英国版:ハーパーコリンズUK社、米国版:デルレイ社 より出版。
訳注)文中に登場する作家たちについて: スティーブン・キングとパトリック・オブライアンについては、説明するまでもございませんね。 アン・マキャフリイとテリー・ブルックスは、いずれもアメリカのSF・FT作家では大御所。マキャフリイは「パーンの竜騎士」シリーズの作者として有名です。 日本での翻訳はマキャフリイがハヤカワ文庫SFと創元推理文庫、ブルックスがハヤカワ文庫FT。ブルックスは「スターウォーズEP1:ファントムメナス」等のノベライズも手がけてます。 スザンナ・クラークは、まだ日本で翻訳が出ていないようですが、「Jonathan Strange & Mr. Norrell」で、昨年(2005)の世界幻想文学大賞とヒューゴー賞の二冠に輝いた作家です。(ヒューゴー賞は、世界SF大会参加者の投票によって決まるSF界ではもっとも有名な文学賞) 書評などを読むと「Jonathan Strange & Mr. Norrell」は、大人のためのハリーポッターとして、英語圏ではベストセラーになった作品のよう。
ええっと。 いやその、あー、ちょっとアタマが想像を拒否しているんですけど。 フリゲート艦の甲板に竜のタマゴ? イギリスの竜とフランスの竜が1805年に空中戦?? バトル・オブ・ブリテン1805、竜用の飛行甲板が必要か?…などと冗談を言っている場合ではなくって、いったいこのストーリーはなにごと?! 日本のアニメじゃぁないのよ〜!
私の頭が硬いんですかねぇ。なんとなく竜というと中世ヨーロッパ、ルネサンス以前…というイメージで。 いやその、1808年でもユニコーンを信じていらした艦長は(4巻に)いらっしゃいましたが、でもまぁ当時の世間一般の通念としては、ユニコーンは既に眉唾モノ。 19世紀のファンタジーはもう少し身近というか小粒というか、ほらドラキュラとか…ねぇ。いくらなんでも、竜は…大物すぎませんか? あぁでもありましたっけ? 20世紀の第一次世界大戦を舞台に、ドラキュラのリヒトホーフェンが複葉機と合体して空を飛んでしまうという長編小説が、創元推理文庫に。 それを考えたら、フリゲート艦に竜でもいいんでしょうか?
でも飛行甲板どうするの? フリゲートは狭いんだから、甲板上は帆とマストと大砲に占領されていて、竜が降りられるスペースがないわよ。 それにちょっと思ったんですけど、この挿絵の竜、西洋の竜ですよね。中国からの贈り物だったら東洋の竜じゃないとまずいんじゃないでしょうか? 西洋の竜は恐竜巨大化系だから場所をとるけど、東洋の竜は水蛇巨大化系だから、マストに巻き付いてくれていればフリゲート艦上でも場所はとらないかもしれないけれど。 ああ!こんなこと、私が心配する問題では、まったくもって、ありませんが…。
マキャフリイとパーンの竜騎士が好きな私でも…この本を買うのはちょっと、中身をぱらぱら見てからでしょうか。米国版のペーパーバックはSFの大手DELRAY社から出ているそうなので、日本でも大手書店の洋書売り場には現物が入ってくると思うんです。 この本に関しては私、バリー・ヒューガートのコメントをちょっと読んでみたいかと。どこかにありませんでしょうか? バリー・ヒューガートは、アメリカ人ながら中国を舞台にしたファンタジーを(英語で)書いて、世界幻想文学大賞を受賞された方なんですが、ファンタジー作家になる前は米軍の士官だったという異色の前歴をお持ちです。たしか海軍さん。中国古典に興味を持ったきっかけは、在日米軍基地への配属中に日本語で読んだ中国の古典作品だったという。 ヒューガートがこの本を読んでいったいどのように感じたか、これは単なる興味からなのですが、ちょっと知りたいと思います。
この本を買ってみようという方はこちらから His Majesty Dragon(米国版ペーパーバック) Temeraire(英国版ハードカバー)
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こんな話しのあとに何ですが、 ボライソー28巻「若き獅子の凱歌」ハヤカワ文庫NVは、来週の週半ば、1月25日(水)の発売です。 皆様>お忘れになりませんように。
さらに、 英国アカデミー賞(BAFTA)のノミネートが出そろいました。ご参考まで。 http://www.bafta.org/site/page287.html
2006年01月20日(金)
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