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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
「アレキサンダー」にウォーリー君を探せ!

オリバー・ストーン監督の歴史スペクタクル「アレキサンダー」に行ってきました。
ついでに、サプライズ号の気の毒なウォーリー君ことジョセフ・モーガン演じるフィロタスも探してきました(笑)。

この映画、アメリカで不評…というのは、よ〜くわかります。
ペルシアの専制君主から自由のために人々を解放する…という演説をぶって攻め込んだアレキサンダーが、長征のあげく疲弊してぼろぼろになって撤退する。
ストーン監督は「この映画には政治的メッセージは一切ない」と言明しているそうですが、やはり今この時期に、ガウガメラの戦いとバビロン入城(いずれも現在はイラク国内)を派手派手しくやってしまっては、かぶるものが多すぎます。

でもこれ、史劇としてはよく出来ていますよね。
大王を英雄として祭り上げず、人間アレキサンダーを描いて、戦いも美化せず血みどろに仕立て上げた。
おそらく実際の歴史的事実というのは、こんなものだったのだと思います。

その意味では、アーサー王伝説を薄汚れた泥どろの騎士にしてしまった「キング・アーサー」と同じだから、映画とはサクセス・ドリームを楽しませてくれるもの…という期待が一般的なアメリカでは(この映画の隠された政治的テーマが耳に痛かろうと何処ふく風であろうと)、やっぱり結果は同じだったかな?とも思うんですが。

ただアーサーと比べると、こちらの方はもともとの歴史のスケールが大きいこともあり、どうしても人間ドラマが拡散してしまいがち。
アレキサンダーにはおそらく、2つの人間ドラマがあると思うのですが、1つ目のマケドニア王家内の確執と人間アレキサンダーについてはわかりやすかったけれども、2つ目のそしてストーリー進行(=アレキサンダー軍の侵攻)とパラレルになる、大王と麾下の将軍たちのドラマについてはちょっと拡散しすぎてしまった感があり、このための物語の結末がぼやけてしまったのではないかと…ちょっと残念。

インドで最後に「もう帰りましょう」と進言するクレイトスは、あそこで唐突に発言をしたような感がありますが、実はその前に、長年苦楽を共にした同輩の将軍を謀反の疑いで殺すように命じられ、手を下しているんですよね、でもそのエピソードが遠景でさらーっと通り過ぎてしまうので、後になって「あ、そういえば、ひょっとしてあの時の刺客はクレイトスだった???」と首をひねる状態。
プトレマイオスだって最後に語り手になるくらいなら、もっと途中で派手なドラマがあって良い筈だし、

いや、それでも俳優さんたちが上手いから、何となくそぶりや目つきから、彼らの考えてることはわかります。わかりますけど、逆に言えば、あれだけ上手い俳優さんたちを使いながら勿体ない…とも思うんですよね。

このようなうがった見方をするのはどんなものか?とも思うのですが、
どうも最近、DVDが発売されて復活した削除シーンを見ると、それが人間ドラマだった…という映画が多すぎて、この映画もひょっとして、脚本段階では将軍たちのドラマもあったが実はカットでした…とか言う話だったら嫌だなぁと。
それでその分戦闘シーンが長かったんです…などという「王の帰還」のような話はもう沢山…とは思いますが、ただ、もし、あの長すぎる血みどろな戦闘シーンが、観客に「戦いはもううんざり」という厭戦気分を起こさせる意図的な演出だったとすれば…
この映画のメッセージの一つは観客に伝わった、ということになるのかもしれません。
…もっとも、このような感想が正しいのか…それともうがっているのか…私には自信がありません。

でもやっぱり、歴史劇はハリウッド超大作ですね。
そして映画館の大スクリーン。
たとえセットでも、CG合成でも。バビロン入城には感激しました。
博物館でしか見られない…そして現地ではもはや風化した礎石のみになってしまった古代バビロニアの王城が色鮮やかに蘇るのですから。
ちょっと建築史上、時代が多少前後していたかな?と首をひねる部分もありましたが。
でもこの夢を見せてくださっただけでも、この映画、私は来て良かった〜!と思いましたです。

ところで、サプライズ号のウォーリー君こと、英国の若手俳優ジョセフ・モーガンの演じるフィロタスですが、
アレキサンダーが王となり、長征に出て最初の大きな山場となるガウガメラの戦いの作戦会議のところで見分けられます。髪型も髪の色もウォーリーの時と同じですから(衣装は全然違いますけど…なんと言っても今度はマケドニアの指揮官)わかりやすいと思います。
そこでミスってしまったら、次はガウガメラの乱戦の中。彼は一翼を指揮するパルメニオンの息子としてアレキサンダーに救援を求めて馬を飛ばします。
「援軍を!」と叫びながら駆け込んでくるのでここはわかりやすいと思います。

うーん、出世したねぇウォーリー君。乗馬も上手いじゃないか、マストも上れる馬にも乗れる…これはもう歴史劇に関する限り敵なしだわ…などと思ってしまいました。


2005年02月12日(土)