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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
雑談と今週のTV映画情報など

最近ちょっとカウンターのまわりが早いなと思ったら、「キング・アーサー」の関係で読みにいらした方も結構いらっしゃるようですね。
私自身はこの映画、結構はまっていて、先週のレディースデーに早速2回目に行ってしまったりしています。が、私の場合、某海洋小説とヨアン・グリフィスが被っているので、ひょっとしたら色眼鏡かかってないかしら?…と自分でも自分を疑う部分があるのですが。

でも少なくともそれは、私一人ではないことがわかりました。
先日ちょっと書いた「クライブ・オーウェンのアーサーを見ていると思い出す、とある艦長」の話、その艦長が誰か明らかにしていなかったのに、全く同じ感想を持ってくれた友人が現れました。
以下、許可を貰いましたので、彼女の感想から、アーサーの人となりを引用。

>理想主義者で上司には睨まれ、上司や守れと命じられた物はひどい奴。
>それでも命令は遵守。でも自分の理想のために権力者に反抗しまくり、部下思い。
>任務で出会った虐げられた女性とラブラブ。
>部下は少数精鋭、文句言いつつ隊長大事。兵役を満了しても隊長のために死地に残っちゃう。

読んでなるほどな…と思いました。これって全く、映画「キング・アーサー」のストーリーその通りなんですが、
長年の海洋小説ファンの方>
このようなストーリー、昔どこかで読まれた記憶ありません? 主人公の立場は違えども、エピソードはそっくりそのまま。
場所はハドリアヌス城壁の北ではなくって地中海。
そりゃあ、私が魅了されるわけだわよね、この映画…と納得いたしました。

それにしても、このアーサーの人物設定、何とかならないものか、
ほんとうに何処ぞのストーリーそのままなのですけれども。いったいどうしてこんなことに?

ただ「キング・アーサー」で面白いな…というか、こまったな(苦笑)と思うのは、普通このような性格の陰のカリスマ指揮官には、彼の感情を代弁したりやんわり受けとめたりする役目の副指揮官がつきます(例えば「ナヴァロンの要塞」のマロリー(グレゴリー・ペック)とアンドレア(アンソニー・クイン)のように)。
ところがアーサーの場合は副指揮官が、素直じゃないヨアン…じゃなかったランスロットで、これがまた他の部下の前では感情を隠すのが上手い…という、まったくもって第2シリーズのレナウン号のホーンブロワーのような性格になっている。ランスロットはアーサーと二人きりにならないと、決して本音を口に出しません。

ゆえに、結局、彼らの感情を代弁する第三者と仲介役が必要になるわけで、これをしてレナウン号でのケネディとブッシュの役目と評してしまうところが、私、色眼鏡入っているのでは?…と自分で自分を疑う部分ではあるのですが、ともかく…。
あ…、今、私、アメリカの大統領選の話しをしているわけじゃありませんからね…。そういえばボライソーにはクリントン少佐という人もいたけれど。

ともあれ、円卓の騎士団の中でケネディ役、つまり理不尽でもそれを口に出せない隊長と副隊長に代わって「これはおかしいじゃないか!」と指摘するのがボースとガラハット、仲立ちになる年長のブッシュ役がトリスタンとガウェインなのでしょう。
2回目を見に行くと、騎士団の中の微妙な人間関係が見えてきて、なかなか面白い。
決してセリフだけではない、微妙な表情とか間のとり方とか、細かい部分まで神経の行き届いた演技が見事です。

でも友人が「これはアドバイスだけど」と前置きして言っていましたが、初めて見る時には、あまり無理をして騎士たちを見分けようとしない方がいいかもしれない…と。それに気をとられると混乱しますから。
よく皆さんの混乱する、ガラハットとガウェインとトリスタンの見分け方は、金髪がガウェイン、黒髪で年長で鷹を連れているのがトリスタン、黒髪で比較的若くて表情がくるくる変わるのがガラハット…でございます。
3回目に行っている時間はさすがに無いと思いますが、DVDはまず間違いなく購入してしまう予感。

DVDと言えば、M&CのDVD売り上げは順調のようですね。
日本経済新聞の土曜版「NIKKEI プラス1」の売れ筋チェックDVD上位5作品では2位でした。首位は「ファインディング・ニモ」なのですが、これはまぁ仕方のないところでしょうか?(上映時にラスト・サムライと並ぶメガヒット映画でしたし)

この日経土曜版には「映画カレンダー」というコーナーがあり、今週のTV映画からおすすめ作品の一覧と、「今週の1本」ではその中の1本を取り上げ映画評を載せています。
今週とりあげられていたのは「荒鷲の要塞」。
英国の冒険小説を映画化した1968年のアメリカ映画。放映予定はNHKBS2で5日深夜0:30〜)
原作はC.S.フォレスターと並ぶ英国冒険小説の第一人者アリステア・マクリーンの小説ですが、映画の脚本もマクリーン自身が担当。
映画評論家いわく「最近の映画に慣れた目から見ると、丁寧で優雅なつくりのアクション映画、思えば60年代の観客は今よりずっと辛抱強いのだった」

私が冒険小説というジャンルを読み始めたのは社会人になってからで、「荒鷲…」の原作を読んだのも10年くらい前ですが、過去に映画化されたものについても、このようにTVで放映されたりするとチェックしています。
英国の冒険小説って、単なるアクションで終わらず、複雑な人間関係があったり、人生哲学があったり、気のきいたセリフがちりばめられていたりするものですが、ハリウッドのアメリカ資本で映画化すると、どうもドラマ部分が薄れてアクション主体になってしまうきらいがあります。
「荒鷲の要塞」はまだ、主人公2人(リチャード・バートン&クリント・イーストウッド)の気の利いた会話が残っていますが、これでも原作の渋さに比べたら、ずいぶんドンパチの派手なアクション映画になっちゃったなぁと、私は思うのですけれども。
でもそれでも確かに、評論家のおっしゃる通り、今にして思えば丁寧なアクション映画と言えるでしょう。

M&C公開時に米国で言われていた「この作品(M&C)は、50年代60年代を彷彿とさせるクォリティーの高いアクション映画」という評は、たぶん「荒鷲…」以前の映画群を念頭において書かれているのだな…と思われます。
今から考えてみると、M&Cって、本当によくこの21世紀に、こんな渋い映画が作れたものだ…と今さらながらに感動します。


***関東の皆様に映画情報***
8月7日(土)TBS深夜26:40〜(2:40AM〜4:50AM)「スカートの翼ひろげて」
3人の女性を主人公に第二次大戦当時の英国を描いた映画ですが、ポール・ベタニーが主人公の恋人役(軍人さん)の筈です


2004年07月31日(土)