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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
南部イングランド海洋小説旅案内(1)

もう10年以上前になりますが、私の初めての一人旅、そしてヨーロッパは英国でした。
オーバートン、ポーツマス、プリマス、ファルマス、ハリッジ、ノーフォーク。児童文学と海洋小説の旅です。後者の訪問地はこれ、日本で言ったら、横浜、横須賀と呉と佐世保に行ったようなものですね。見事に港と軍港ばかり。
児童文学の方はリチャード・アダムズ「ウォーターシップダウンのうさぎたち」とアーサー・ランサムです。

当時は周囲に同好の士が見つからなかったものですから、仕方なく一人旅になりました。
半分以上の場所は「地球の歩き方」にも載っていませんでした。
でもやっぱり、どうしても物語の舞台を見たいという気持ちを抑えきれず、まぁ地図に載っていて鉄道の便と2本の足のある限り、行けないところはないだろうと、飛行機と宿とブリットレイルパスだけを手配して、あとは出たとこ勝負で何とか行ってきました。まぁいろいろ失敗もあったのですが。

地図のある限り何とか行ける!と思ってしまったのは、やはり子供の頃から親しんできた英国児童文学のせいかもしれません。
英国人ってホント、地図好きな国民ですね。
子供向けの本にまで、見開きに地図が入っています。指輪物語の中つ国のような架空の物語まで、きちんと地図がついているのです。
でも、あの中つ国の地図ってどうやって作ったのでしょうね? 正確な方位磁石って、あの時代のあの国にあったのでしょうか?

つっこみはともかく、英国の小説についている地図…その正確さは大したものです。
現地英国で購入したOS(Ordnance Survey:英国陸地測量部=日本の国土地理院にあたる)の縮尺五万分の一の地図を見る時の参考に、小説の地図をコピーして持って行きましたが、比較したところ、小説の地図を手に持って歩いても十分通用する正確なものでした。

「地球の歩き方」にも載っていない場所に行かなければならない時に必須なのは、このOS(Ordnance Survery)の地図です。
日本の洋書店やネットでも購入できますが、ロンドンの大きな書店(Charing Cross Rd.近辺には大きな書店がまとまっているのでここで調達すると便利)には、全国の地図が揃っていますので、地方に行かれる前にロンドンで買っておかれると良いと思います。
日本でも大きな書店に行かないと国土地理院の五万分の一地形図が揃わないように、OSの地図もいつでも何処でも手に入るとは限らないので、出たこと勝負とは言っても早めの対応が大切。

この地図の便利なところは、i(information:旅行案内所)やviewpoint(景色の美しいポイント)、駐車場などが地図に記入されていることです。
それから、縮尺が日本の国土地理院地形図と同じ五万分の一なので、日本の地図と同じ距離感覚で見られるところ。

いまはネットも発達していますし、多くの博物館が独自のHPを持っていて、親切なアクセス案内紹介があり、また各市町村も、観光に熱心なところは独自のHPを持っています。
「Google」で検索すればかなりのことが事前に日本でわかりますし、関東圏の方なら東京の英国観光局で相談する、という手もあります。

でもそれでも駄目だったら、最後の手段は、このOSの地図で直接場所を探し、その後に、そこから一番近い町に「i」のマークを探すという手を使いましょう。
「i」はinformation:旅行案内所。ここで尋ねると、地元の方が親切に、博物館までの行き方を教えてくださいます。

事前に日本で調べておいても、地元の案内所でもう一度確認した方が良いでしょう…というのは、ネット情報等にはしばしば落とし穴があって、アクセス案内に出ていたバスが実は土日運休とか…これは私も何度か泣かされました。
地元の案内所はこのようなローカル情報に詳しいですから、現地で右往左往する率が少し減ります。

もっとも、この旅行案内所自身もクセモノで、小さな町だと観光客の多い土日しか開いていない…というところがあります。
ですので、失敗したくなかったら、まず最寄りの大きな街(前述の馬車博物館だったら、マンチェスターかシェフィールド、ノッティンガム。バックラーズハード海事博物館だったらサザンプトン)の旅行案内所(営業時間は「地球の歩き方」など参照)で、確認してから行かれた方が良いかもしれません。

最寄りの鉄道駅までのアクセスはネット時刻表で。
英国列車旅の注意は、ネットを探せば多くの方の体験記が載っていると思いますが、私自身が痛い目に遭った注意点は2つ。

◆切符はすぐに買えるものじゃない
◆日本のホームの常識は通用しない

でしょうか?

◆切符はすぐに買えるものじゃない
初めての旅行で、ロンドンからポーツマスに行こうとして、ブリットレイルパスの使用開始手続き(validate)するために窓口に並びました。
前に並んでいる人は5人ほどで、列車は20分後に発車でした。ところが私、この列車に間に合わなかった。
自分の番が来るまでに25分も待ってしまったんです。
英国国鉄も民営化されたから、今は少し変わったでしょうか? でも私、3年前にフランスでやはり同じ経験をしたから、今でも変わらないかしら(フランスはまだ国鉄だけど)?
日本では「みどりの窓口」に並ぶ前に、自分で時刻表を調べて用紙に記入しなければならない、それも第二希望まで書くようになっています。これって画期的に能率的な大発明ですよ! 日本ってすごい国だわ。
当時の英国(今もか?)やフランスでは、乗客がいきなり窓口に行って「私明日の9時頃にエディンバラに行きたいんですけど〜」というところから始まるみたいです。それから窓口で時刻表を調べて、空席を探して…発売窓口が旅行相談所を兼ねているんですね。だから時間がかかる、かかる。

◆日本のホームの常識は通用しない。
ホームの両側に線路があるのに、終着駅でもないのに、上りと下りが同じ線路、同じホームに入ってくる。別のホームで待っていたので、慌てて走ったのですが、背中の荷物が重くって列車を逃しました。
同じホームに別方向行きの列車が2本入っていたこともありましたが、これはかなり普通の現象のようです。
電光掲示板に出ているのと別の列車が入ってくる…これは表示案内がコンピュータ化されて、かなりまともになったかしら? ま、いちおう入ってくる列車の先頭表示は確認してください。
ホームにいる駅員が、列車の運行状況を知らない→確実に知っているのは運転手のみなので、先頭車両に行って運転手に直接聞いた方が確かです。
10年前には、自動販売機にお金を食べられた、ぱりっとした背広の絵に描いたような英国紳士が、どんどん!っと販売機を叩いている光景を目撃しましたが、最近の販売機は精密機械だから、この方法はどうでしょう…?

ともあれ「郷に入っては郷に従え」「ローマではローマ人のように、英国では英国人のように」ふるまっていればあまり間違いはないですから、外国では周囲をよく見回して、地元の方の行動にならうということで。

あらら、まえがきだけでかなり長くなってしまいました。
では、ロンドン近郊、ポーツマス、プリマス、ファルマスの実際の紹介は明日付けの別日記にて。

**追加情報**
昨日ご紹介した、バックラーズハードの海事博物館について、ここは「ホーンブロワー」にも登場するサー・エドワード・ペリューのインディファティガブル号を建造した造船所でもある…との追加情報をいただきました(Tさん、ありがとうございます)。
このインディは、TV映画でインディを演じた「グランドターク号」ではありません。実在のフリゲート艦インディファテガブル号の方です。


2004年07月25日(日)