Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
英国M&C関連博物館案内
夏休みの季節となり、旅行の計画などたてている方もおられると思います。 昨年来収集してきました「M&C」関連情報バックナンバーから、3回にわけて旅行関連のものをご紹介しようと思います。
と言っても、もとがイギリスのお話ですから、日本からいちばん近いところと言ってもインドネシアのスンダ諸島。 すべて海外旅行案内となりますので、あしからずご了承くださいませ(笑)。 今回は第一回とし英国博物館案内。
英国博物館協会のホームページ「24 HOUR MUSEUM」には、昨年11月の映画公開にあわせて「パトリック・オブライアン博物館案内(A Patrick O'Brian Museum Trail)」というページができました。 このページでは「M&C」を楽しむにあたって参考となる英国各地の博物館7カ所を紹介しています。 主要部分をご紹介するとともに、補足説明を加えます。
1)フリゲート艦トリンコマリー号 H.M.S.Trincomalee Trust (博物館運営団体) Jackson Dock, Hartlepool, TS24 0SQ, England (住所) 当時のフリゲート艦トリンコマリー号を保存・公開。
フリゲート艦トリンコマリー号は1817年に建造された。時代的には10年ほど遅れるが、その艦尾甲板に立つと、ジャックの初めてのフリゲート艦ライブリー号(38門艦)に乗船したような気分になれる。ジャックがどのように砲術訓練を指揮したか、容易に想像することができる。 フトックシュライドを見上げれば、ここを登った船乗りたちを賞賛するようになるだろう。
**補足情報** 実際のトリンコマリー号は46門艦ということで、サプライズ号(28門)よりはかなり大型です。1817年の建造ということもあり、むしろアダム・ボライソーがボライソー・シリーズ24巻から指揮しているアンライバルド号(46門)に近いのではないかと思います。 Hartlepoolは北部イングランドの港町、ロンドンから列車だとニューカッスルまたはリーズ乗換え。 詳しいアクセスについては、H.M.S.Trincomalee TrustのHPに現地までの地図を含む詳細が紹介されています。
2)馬車博物館 Red House Stables Working Carriage Museum(名称) Old Road, Darley Dale, Matlock, DE4 2ER, Derbyshire, England(住所) 当時の馬車を保存し、体験乗車なども出来る博物館。
オブライアンの小説には、乾いた陸の上での、わくわくする忘れられないような馬車での移動シーンも描かれている。 ダービーシャー州の田園地帯では、小説に登場するような馬車乗車体験を味わうことができる。 もちろんそれは、小説の中でダイアナが手綱をとって見せたような猛烈なものではなく、もっとずっと穏やかで安全な体験である。
博物館には、いつでも乗ることの出来る馬車が40台前後準備されており、近郊のお屋敷をめぐる1日馬車旅行ツァーなどもある。 ダイアナのように馬車を駆りたいと思う方には、「馬車の操り方」といったレッスン・プログラムもあり、当時の衣装に着替えて馬車旅を楽しめるサービスもある。
**補足情報** ダイアナと馬車と言えば、2巻のバビントン君もビビった(?)馬車暴走を思い出します。 もう一つ忘れられないのは、8巻の1章だか2章だかに出てくる「出航に間に合わない、さぁたいへん! どうしよう!」と、ロンドンからポーツマスへ馬車で大暴走するスティーブンですね。 博物館のあるダービーシャー州Matlockは、ノッティンガムの北、マンチェスターとシェフィールドの南。(地図参照) ロンドンから鉄道で行く場合は、これらの三都市のいずれかに行き(所要2時間〜2時間半)バス乗り継ぎでしょう。 長距離バス(コーチ)利用の場合、マンチェスター行き、シェフィールド行きの中には、マトロック経由のものもあるようです。 詳細情報は現地のインフォメーションで、最新のものをお尋ねください。
3)戦列艦ビクトリー号 Portsmouth Historic Dockyard(名称) College Rd., H.M.Naval Base, Portsmouth, PO1 3LJ, Hampshire, England(住所) トラファルガー海戦時のネルソン提督の旗艦ビクトリー号を、保存・公開。
ジャック・オーブリーはかつて、司令官であったホレイショ・ネルソンにテーブルで塩をまわしたことがあるという。 それだけでも訪れるには十分な理由だが、下部甲板の病室区画を見学すれば、艦の軍医の仕事場がどのよう場所であったのかを知ることができるだろう。当時の医療器具などが展示されている。 もっとも(小型のフリゲート艦に勤務する)ドクター・マチュリンにとっては、(ビクトリー号のような大型艦の)広い病室区画は夢の仕事場であったことだろう。
**補足情報** 「ジャックが塩をまわした提督だから、訪れるには十分な艦」というのは冗句ですからね、冗句。 ビクトリー号は海洋小説ファンにとっては聖地…とまでは言いませんが、海を愛する英国人たちが大切に守って来た歴史と伝統の史跡です。 ここが本家本元、というより、この英国の伝統精神が無かったら、ホーンブロワーやオーブリーなどの歴史海洋小説の人気は生まれなかったでしょう。 病室区画でスティーブンをしのぶのも良いけれど、やはり見学前に見ておくべき映画はローレンス・オリビエ&ヴィヴィアン・リーの「美女ありき」でしょう。 まさにここビクトリー号の最下甲板で、オリビエ演ずるネルソン提督が、腹心の部下で旗艦艦長であるハーディに看取られて息を引き取るシーンは、白黒映画や撮影所内のセットというハンデ(1940年頃の映画です)をものともせず、直に胸に迫ってくるものがあります。
ポーツマスはロンドンから列車で2時間弱、ビクトリー号と海軍博物館に行くには終点のポーツマス・ハーバー下車。 ビクトリー号と次にご紹介する王立海軍博物館は「地球の歩き方」にも載っている観光名所です。 ここは私も訪れたことがあるので、細かいアドバイスなどは明日付けの「南部イングランド海洋小説旅案内」にて
4)海軍博物館 Royal Naval Museum(名称) H.M. Naval Base, Portsmouth, PO1 3NH, England(住所) ポーツマス海軍基地内にある海軍博物館
海軍博物館の数々の展示や模型は、オブライアンの小説に登場する数々のものを思い起こさせるが、ファンによって何よりの宝は、各巻の表紙を飾った画家ジェフ・ハントによる海洋画の原画が展示されていることだろう。 海軍博物館はそのうちの12枚を所有し、順番に展示している。
5)海軍火力博物館 Explosion! The Museum of Naval Firepower(名称) Priddy's Hard, Gosport, PO12 4LE, Hampshire, England(住所)
ジャック・オーブリーの時代、この場所は火薬の補給基地として使用されていた。 火薬は木製の樽に詰められ、安全のため港の中央に停泊した艦船までボートで運ばれた。
**補足情報** この博物館のあるゴスポートは、ポーツマスの海軍基地からフェリーで渡った対岸。 ゴスポートには潜水艦博物館などもあり、ポーツマス近辺の海軍関係博物館をくまなくまわろうとすると、最低でも2日かかるのではないかと思われます。
6)チャタム海軍工廠跡 Historic Dockyard, Chatham The Historic Dockyard, Chatham, ME4 4TZ, England
上述のネルソン提督の旗艦ビクトリー号は、チャタムの海軍工廠で建造された。 オーブリーの指揮艦では、17巻に登場するベローナ号が、チャタムで建造された艦である。 この博物館では、木造艦がどのように建造されていたかを、模型などで知ることができる。
**補足情報** 当時のチャタム海軍工廠が登場するのは、ラミジの21巻。部下のマーティン海尉の故郷でもあります。 チャタムへはロンドンから列車で1時間弱、Gillingham下車、駅からはバスがあるのではないかと思いますが(地図参照)、詳細は現地のインフォメーションにてご確認ください。 ロンドンから鉄道で行くとチャタムの手前の町は、ボライソー・シリーズに登場するトマス・ヘリックの故郷、ロチェスターです。 ロチェスターには英国工兵隊博物館などもあるようですので、このあたりをじっくり見るのも良いかもしれません。
7)バックラーズ・ハード海事博物館 The Maritime Museum, Buckler's Hard(名称) Buckler's Hard, Beaulieu, Brockenhurst, SO42 7XB, Hampshire, England(住所)
ジャックの時代、Baulieu川の河口には造船所があり、50隻を超える船が建造されていた。 かつてジャックがネルソン艦長の下で海尉として勤務したアガメムノン号もこの造船所の建造である。 この博物館には、海事関係だけではなく、19世紀当時の村の様子が復元された展示もある。 当時の著名な船匠ヘンリー・アダムズ(Henry Adams)の家(仕事場)もそのままに復元されている。
**補足情報** Brockenhurstは、サザンプトンからボーンマスに行く鉄道の途中駅。(地図参照) ロンドンからは2時間弱。 ホーンブロワーに登場するサー・エドワード・ペリュー艦長のインディファティガブル号は、このバックラーズ・ハードの建造だそうです(Tさん情報提供ありがとうございます)。
明日は、南部イングランド海洋小説旅案内と題して、私が訪れたことのあるポーツマス他南部イングランドの軍港と、ロンドン近郊の史跡を簡単にご案内する予定です。
2004年07月24日(土)
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