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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
背中の無い女

池袋の新文芸坐に行ってきました。
スクリーン前の1〜2列を除いてほぼ満席。日本で「M&C」を見るのはこれで9回目ですが、こんなに映画館が混んでいたのは初めてです。
どうせならと、併映の「レジェンド・オブ・メキシコ」も見てきました。

この感想は後述するとして、昨日の午後の回に行った理由は、実はA.ランサム&指輪物語の関係の方に、映画館でお目にかかる予定があったから。
その後お誘いをいただいて、初めてだったにもかかわらず、指輪関係のオフ会に飛び入りさせていただいてしまいました。
オフ会の話題は、指輪、M&C、ナルニア、ランサム、ドリトル先生、三銃士…と入り乱れ。私はほとんどの方と初対面だったのですが、にもかかわらず、子供時代の読書体験まで戻ると共通点が多々あって話がはずむ、はずむ、皆さん同じような道をたどって来られているのだなぁと。

そこで、これを読んでいらっしゃる皆様に質問です。「背中の無い女」…って何のことだか、ぱっとすぐに思い出せます?
昨日そのお話しを伺った時に、ウン十年前の記憶が読みがえって、私ちょっと感激でした。
背中の無い女…って、帆船の船首像のことです。「ムーミン」のスノークのおじょうさんが言ったのです。
船首像とは帆船の船首部にある彫像のことですけど(ネイグルが丁寧に治してキスしてましたね)、背中の部分は船に固定されているから無いんですよね。
そういえばむかし、小学生の時にムーミンのこの話は読みました。背中の無い女ってなんだろう?とも思いました。なんだかおどろおどろしくて怖いもののように記憶していました。でもそれは、ニョロニョロやその他ムーミン谷の数々のこの世ならぬ者たちと一緒くたに記憶の中にまぜこねられて、昨日ある方が取り分けて取り出してくださるまで、サプライズ号の女神とはかけはなれた所にあったのでした。
昨日お世話になった皆様>大変楽しいひと時を過ごさせていただきました。ありがとうございました。


話し戻って「レジェンド・オブ・メキシコ」
私は本来、アクション派手派手のハリウッド映画ってちょっと苦手なのですが、「レジェント…」は登場人物がクセ者ばかりのようだったので、じゃぁせっかくだからちょと早めに行ってこれも見てみようかしら…と。

面白かったけど、これちょっと二本立ては辛いかも。登場人物が全員クセ者で、信用出来る人間が一人もいなくて、誰がいつ何処で裏切るか全くわからない。静かな屋内のシーンで突然振り返って撃たれて殺されてしまう人がいたり…とか。銃撃戦も派手ですし。
とにかく見ている方は2時間ずっと、ほとんど気が抜けない。こんなにピリピリしながら見た映画って、トニー・レオン&アンディ・ラウの「インファナル・アフェア」以来かもしれません。
でも「インファナル…」の場合、その底にあるのは儒教的価値観なので、東洋人である私にはこちらの裏切りパターンは理解しやすいんですけど、「レジェンド…」の裏切り合戦はおよそドライというか、自己主張の結果というか、時についていけないのもあって。

でもこの映画の魅力は、なんといっても超個性的な脇役たちでしょう。
ウィレム・デフォー演じるメキシコの実業家じつは麻薬王。狡猾な…という形容詞がぴったりな人間の二面性が魅力的。
その右腕、匿われているアメリカ人犯罪者ビリー。ミッキー・ロークったらこんな崩れた中年になって…素敵。
私、この前に彼を見たのはジャック・ヒギンズ原作の「死にゆく者への祈り」のIRAの殺し屋ですから、えっと15年、もっと前? いやこの映画で、メキシコの麻薬王のもとへ逃げる前のビリーがどういう設定だったのかは知りませんが、若い頃のロークを見ていた観客にはどうしてもかぶるものがありますから、上手いキャスティングだと言えるでしょう(ローク自身ももちろん、上手いんですけど)。

二人のヒロイン、カロリーナ(サルマ・ハエック)とアヘドレス(エヴァ・メンデス)。これがまた格好良いんですわ。ラテンならではの、情熱的ではあるけれどからっとした絡みが、女性の目から見ても共感できる。男が身勝手なら女もしたたか、でも憎めない。
よくバランスのとれたアクション・ラブストーリーだと思います。

個性派の極め付きはやはりジョニー・デップ演じる極悪CIA。とんでもなく悪い奴ながら、嫌みが無くそれが魅力になってしまう不思議なキャラクターでした。
全然関係ないんですけど、これって、今NHKでやっている大河ドラマ「新撰組」の山南さんの魅力とちょっと共通するところがあるのでは?

そして主演アントニオ・バンデラス、絵に描いたような孤独のヒーローかしら。私は彼を見るのは「マスク・オブ・ゾロ」以来です(こういう話しを始めると、私がいかに何時も、偏った映画を見ているかわかりますね)。
年齢を重ねてさらに渋みが増して、こういう陰があった方が、孤独のヒーローはいいですよね。
確か今、ゾロの続編を撮っていると聞きました。今のバンデラスとキャサリン・ゼタ・ジョーンズ(ゾロの妻エレナ)なら更に魅力的な映画になるのでは…と。これはちょっと楽しみ。ゾロの1は私、実はTV落ち待ちだったんですが、続編は映画館に行ってみてもいいかも…と思いました。

…というようなことを考える人が、「M&C」にもいてくださると良いのですが。
「M&C」続編…DVDの売り上げは良いようですが、さてFOX社の決断はいかに?
でも考えてみればゾロとて1と2の間は7年空いているんです。仮に「M&C」の続行が決定したとしても、きっとまた何年も先の話しになるのでしょう(嘆息)。

**追加情報**
14日の日記で、プライスじいさんが候補生たちに「ほんとうに死んでいるのか鼻に針を通して確かめる」という、実際にはない話をして脅かした、と書きましたが、その後
「18世紀の初め頃の海洋小説で、本当に鼻に針を通しているのを読みました」というメールを頂戴しました。
19世紀初め頃の英国海軍では軍規や刑罰などがある程度整備されてきましたが、本来荒っぽい船乗りの世界には、船底をくぐらせる等、乱暴で無茶苦茶な習慣が山ほどありました。
ということは、確かにプライスじいさんの若い頃には、本当に鼻に針を通したのかもしれません。実はじいさん、嘘は言っていないのかも。


2004年05月15日(土)