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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
船乗りを演じるために(Vanity Fair誌記事より)

Vanity Fair 英国版にたいへん長いラッセル・クロウの記事が掲載されています。
この中から「マスター・アンド・コマンダー」に関わる部分のみご紹介いたします。

The Far Side of the Russell Crowe

ジャック・オーブリーを演ずるにあたって、クロウはまず海への恐怖と船酔いを克服しなければならなかった。彼は少年時代にボートで外洋に出てガス欠になり、漂流した経験があった。ニュージーランドへの船旅では7メートルの波に翻弄された苦い経験もある。
メキシコの撮影現場に行く前に、彼はさまざまな航海を経験し、船酔いを克服しようとした。酔い止めの薬を飲みながらカメラの前に立つことは出来ないからだ。

だがもう一つ問題があった。高所恐怖症だ。そして脚本は彼にサプライズ号の策具を登ることを要求していた。「僕が演じるキャラクターは、マストに登ることに何の問題もなかった。だからもし僕がそのキャラクターを演じられるのであれば、僕にも何の問題は無い筈なんだ」
副長役のジェームズ・ダーシーは、マストのてっぺんまで登るというアイディアに、実際かなり難色を示していた。一時はブルースクリーンで撮影しようかという案も出た。クロウはダーシーに言った。「それでは、画面が安っぽくなってしまう。考えてみろよ。僕だって高いところは怖いしし、その危険性も承知している。でも僕は登るつもりだし、命綱をつけるつもりもない。もし落ちたら「グッド・ナイト・イレーヌ」*になるだけさ。だがここまで体を使って仕事をしてきてわかったことは、ジャックに出来ることは僕にも出来るということだ」
「海面から157ft(52m)、6ft(2m)のうねりに揺れるマストを、ジェームズはしばらく見上げていたが、登ったよ。下りて来た後、彼は僕に尋ねた。『どのようにしたら、気のすすまぬことをやれるようになるんですか?』僕は答えた『そういうアプローチではないんだ。君はエンターテナーとして重要な役を演じているんだから、真綿にくるまれているわけにはいかない。君は役になりきることで人々にエンターテイメントを与えることができるのだから』」

クロウを見守ってきたウィアー監督は、このように評する。「彼は空想家ではないし、芸術の神が下りてくるのを待つようなことをしない。その反対で、彼のアプローチは計算されし尽くされており、また非常に実践的だ。彼は脚本を読み込み、細密に調整していく。私が今までに仕事をした俳優の誰よりも深く、脚本を細部まで検討するんだ。単語ひとつジェスチャーひとつまで」

*訳注)「グッド・ナイト・イレーヌ」は歌の題名だ…というところまではわかったのですが、どのような内容の歌かは調べられませんでした。ご存じの方、ご教示ください。


2004年01月11日(日)