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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
「Premiere」誌米国版11月号

映画専門誌「Premiere」米国版11月号の「M&C」に関する記事が、アメリカのネットに紹介されていました。
「Crowe's Nest」(Premiere 2003.11)

Premiere米国版の記事は、いずれPremiere日本版に掲載されることが多いのですが、日本公開が3月初旬なら、2004年2月20日発売の4月号でしょうか? 1月20日発売の3月号は「ロード・オブ・ザ・リング」特集になることが予想されるので、それを考えると3月初旬公開の方が国内雑誌の扱いは多くなるかなぁ…などど。
今から何やら、鬼の笑いそうな話ですが…。

さて、この記事は、ピーター・ウィアー監督と主演のラッセル・クロウが、いかに1805年のサープライズ号の航海を再現していったか?を紹介しています。

ウィアー監督がサープライズ号の正確な再現と時代考証にこだわったことは、前回ご紹介しましたが、監督が大切にしたのものは事物だけではなく、小説に描かれていた空気、雰囲気の再現でした。それぞれのシーンを再現しながら、実際とは何かが違う…と感じとる監督の鋭い感覚に、スタッフやキャストは感嘆しています。

ウィアー監督は、パトリック・オブライエンの長年のファンでしたが、この映画化を引き受ける前に、オーストラリアの復元船エンデバー号にクルーとして乗り組み、4日間航海しました。この経験を通して自信を得た監督は、この仕事の指揮をとることを決意したそうです。

砲の煙の色から、背景で作業する水兵のロープワークまで、全てが正確に再現されているか? ウィアー監督の目はあらゆるものを見逃しません。
出演者たちが当時の空気を再現できるよう、監督は全ての俳優たちに、撮影中はTVを見ることを禁じました。俳優たちは代わりに手紙を書いたり、楽器を演奏したり、絵を描いたりして空き時間をすごすことになりました。

ウィアー監督は雰囲気づくりに、音楽を効果的に利用しました。水葬シーンの撮影前には、全てのキャストが配置につくと、悲しく荘厳な曲を流しました。それから艦長役のラッセル・クロウが進み出て、水葬をとりしきる…といった具合です。

監督とともに、率先して出演者たちの雰囲気づくりを進めていったのは、「艦長」のラッセル・クロウでした。
船乗り役の出演者は全員撮影前に、操帆や武器の扱いを学ぶ2週間のトレーニング・キャンプに参加したのですが、キャンプ開始前夜、クロウは参加者全員を集めグロッグ・パーティを開いたそうです(グロッグのレシピは、ウィアー監督が提供しました)。パーティの席でクロウは全員に色分けされたシャツと名札と針と糸を渡し、最初の命令を下したのでした。
「明日の朝までに、胸に名前を縫いつけてくるように」
このシャツ、士官は青、水兵は白、そしてもちろん、海兵隊は赤だったそうです。

撮影中もクロウ艦長は、ラグビー対抗戦、ジャム・セッション(この話は、ビリー・ボイドが他でも語ってましたね)などを主催し、非公式に士官たちを夕食に招待するなど、オフでも出演者たちのチームワークを深めようと、いろいろ心配りをしていたようです。
撮影中もクロウは、自分の演技だけではなく周囲の全てに気を配っているとスタント・コーディネーターは語っています。「彼には常に全方位360度の周囲の動きが見えているんだ」

ウィアー監督とクロウのおかげで、この映画は単なるart-house adventure(歴史博物館を見て歩く冒険…というような意味でしょうか?)やアクション映画にとどまらず、深みのある心理劇に仕上がっている…と、この記事は結んでいます。


2003年10月10日(金)