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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
休暇届+海洋小説ファンのためのモータースポーツの楽しみ方

この連休は、更新をお休みさせていただきます。
鈴鹿にF1日本GPを見に行ってまいりますので。
メールを頂戴している方へ>お返事が来週になりますので、あしからずご了承くださいますよう、お願いいたします。

海洋小説も、オフ会などでお話をしていると、男性と女性では見方が違うなぁと思うのですが、これってモータースポーツを見る時にも同じことが言えます。

男性の方は、操縦方法(操艦・運転)や、マシン(艦・クルマ)本体に目がいきがちですし、女性はどうしても人(登場人物・ドライバー)を見てしまいます。
そして、どうしても人で見てしまう私の場合、一見まったく無関係に見えるこの二つの趣味に、共通点が生じます。というか、結局は同じ見方をしているんです。

海洋小説の魅力の一つに、「艦が艦長の性格のように動く」面白さがあります。オーブリーのシリーズは、これまではジャックが独航する話が多かったので、あまり感じられないと思いますが、アレクサンダー・ケントのボライソー・シリーズを読んでいると、この面白さはよくわかります。
17-18世紀は操艦や操砲など全て人力でやっていますから、艦長の性格や部下に対する統率力といったヒューマン・ファクターが、かなりの部分で艦の性能に直結してしまいます。
第二次大戦の時代になると、艦の反応スピードが上がるので、艦の動きそのものにも艦長の人となりが現れることになる。これを見事なドラマに仕立てあげたのが「眼下の敵」で、敵対する2人の艦長は最後には互いを深く理解するようになる…という皮肉な結果がうまれるのです。

F1やその他のモータースポーツを見ていて、私が面白いなぁと思うのは、同じところです。
例えばF1では同じカラーリング(外見)のクルマが2台ずつ走っています。遠目には2人のドライバーの見分けはつきませんが、ドライバーの性格やレースへのアプローチがわかってくると、カーブの突っ込みや咄嗟の判断などで、見分けがつくようになるんです。
海洋小説では各艦に独特の雰囲気がありますが、それはもちろんレースチームにも言えます。最近はどこのチームも多国籍軍になってしまっていますが、それでもオーナーがイギリス人であるか、イタリア人であるかによってチーム・カラーはかなり違いますし、同じ日本企業でも、ホンダとトヨタでは攻め方のアプローチがかなり違う。やっぱり社風みたいなものが出るんだろうなぁと思います。

そしてやっぱり、イギリス人はイギリス人の、フランス人はフランス人の、ドイツ人もイタリア人も日本人も、その国の人らしい戦いをしてしまうんです。これだけ国際化されていて、チーム・スタッフも多国籍なのに、これは不思議。やっぱり競争という場に出ると、追いつめられて地が出てしまうということなのか。
そうそう、同じイギリス人でも、スコットランド人はスコットランド人らしく、アイルランド人はとてもアイルランド人らしいので、英国の冒険小説読み慣れている私はつい苦笑…。
日本人は、マシンも人も、優秀だけど繊細ですね。集中力勝負はきくけど、粘って勝つとか力づくで勝つとかは苦手。

以前に地味なイギリス人ドライバーのファンをしていたことがありました(もうその人は引退してしまいました)。彼は決して諦めない人で、粘って粘って表彰台にたどりつくのです。
1年という長いシーズン、もしくは予選〜決勝という3日間の中で、応援している私の方が先に諦めてしまうことが何度となくあり、ときどき「どうしてこの人、これでも諦めずに強気でいられるの?」と思ったりしたのですが、決勝が終わってみると、彼はしっかり表彰台の一角に乗っている。
先に諦めてしまった私は深く反省。
その時実感として、どうしてナポレオンもヒトラーもドーバー海峡が渡れなかったのか、ちょっぴりわかったような気がしたのでした。


2003年10月11日(土)