umityanの日記 DiaryINDEX|past|will
なんやかんや言いながら、座禅三昧の日々が続いた。二、三日たつと、ある程度、要領も分かってきた。最初の頃に比べて、警策で叩かれることも少なくなっていた。必ずしも、集中力が増して姿勢がよくなったからというわけではなく、むしろ、忍者みたいな雲水(巡回する雲水を直堂ーーーじきどうと言う)の動向が察知できるようになったからであろう。「ははあ、今、あのあたりを徘徊しているな、おや、こちらに向かってきているぞ。」とか、相手の動きがわかれば、「用心、用心」と、おのずから対策はできるものだ。直堂とは、ほとんど会話をすることはないが、彼等にも、それぞれに個性がある。何を考えて行動しているのかさっぱり分からないが、えらく強く叩く奴もいれば、遠慮しながら、軽く叩く奴もいる。幾回りか担当が交代するうちに、ほぼ彼らの特徴もつかめるものだ。いやあ、それにしても、思いだすだけで、身の毛もよだつできごとがあった。例の強く叩く直堂が巡回していたとき、仲間の一人がこっくりこっくりやりだした。抜き足、さし足、忍び足で、直堂が近ずいた。この辺は実にすばやくてうまい。空気の流れはあっても、音がほとんどしないのだ。仲間は完全にきずいていない。右肩に警策があてられた。その時、「ばしいいいいいっつ」と、見事な音が轟き、警策が折れて、天井に飛んでいった。「えええっつ」。僕たちは一瞬、唖然とした。何があったのか、最初分からなかった。刹那がすぎた。折れた警策の破片が天井から床に落ちた。「わおーーーー」と叫びたいが、それも出来ない。仲間は大丈夫か?。ちらっつと目で仲間を追った。すっかり目が醒めていたが、けろりとしている様子。さすがに大物、つわもの。安心した。以来、その直堂が担当の時は、緊張感が増したことは言うまでもない。ただ、やりすぎたと反省したのか、その後は、彼の警策も見事な音が響かなくなったことも事実である。いよいよ座禅体験も中日を迎えた。(続く)
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