縁が薄かったのだろうか。
其れとも、 意識的に避けて居たのだろうか。
或る土地に、 二廻り近く住みながら。
足を踏み入れた事の無い地域が、 在ったとしても。
別段。
不可思議な事では無いけれど。
其の身が、 此処に在った時に。
丁寧に、 踏み入れて居れば。
少しは。
想いの宿る地に、 為れたのかも知れない。
「初めて来てみたよ。」 「雰囲気が実家の辺りに良く似てる。」
俺には馴染みの無かった、 此の街は。
「離婚して初めて県外出て住んだってだけの思い出で。」 「懐かしいって感情にもなんないんだよね。」
あの子には、 思い入れの無い街。
杜に居た時分。
あの子が、 住んだ此の街は。
結局は。
未だ、 踏み込めぬ。
想い残した街の、 儘なんだね。
---------- References Apr.10 2011, 「逆向けの春風でしょうか」 Mar.22 2003, 「何を残して消えたのですか」
|