互いの関係が凝固し、 決して変化せぬ代わりに。
僅かながらでも、 安定感をもたらすのが。
血脈の宿命ならば。
互いの関係が流動化し、 多種多様な姿を獲得出来る、 副作用として。
著しく不安定に傾く、 其の宿命を。
安定へ導く術は、 何処に在るのだろう。
互いが相手を認め、 何れ程受け入れたとしても。
届かぬ領域が、 必ず見え隠れする。
時には兄かも知れない。 時には友かも知れない。
時には父かも知れない。
けれども。
其の内実は、 他人でしかないから。
姫の元に、 そっと近寄っては。
「あのね・・・」 「言い争う所とか、聞こえるの。」 「やっぱり嫌だ。」
今日も一言、 息子が口を開いた。
俺に対して 面と向かって言えぬ事。
俺に対して、 遠慮や気遣いを消せぬ事。
自身の母親と、 其の相手たる俺の存在を。
息子は確かに、 許容の範囲に置いたのだろうけれど。
其の会話を、 後で、 姫から、 聞かされると言う事実は。
届かぬ領域の存在を、 雄弁に語って居るんだろうな。 |