< 其れは違うと言えないのでしょうか >
もしあの時、 俺が肯定の解答を君に伝えたら。
今頃はどんな関係だったのだろう。
十年前。
俺が生まれ育った土地を離れる事が決まり、 君が俺への想いを初めて告白し、 そして俺の親父の死期が判明したあの時。
俺に今程度の力さえ備わっていれば、 俺は問いに肯定して、 君を惹き寄せたのだろうか。
一つ手前の駅で先に電車を降り、 階段の途中で、 何時までも俺に手を振って居た君に。
ふとそんな想いを抱いた。
唯一の問題を、 金銭的な条件の問題を、 未だに残しつつも。
元の家、 元の苗字、 元の生活、 そして新たな仕事。
徐々に動きを見せ始め、 徐々に前を向き始めているから。
「仕事決まったんだよね♪」 「これで今年は四回目の花火なんだ!」
口から飛び出る言葉の数々は、 良く晴れて暑い、 今日の気候其の物の様に明るかった。
浴衣姿を目にするのも、 二人で花火を見た事も。
実は初めてであった事に、 今更気付いた男に。
「明日もデートなんだ♪」 「少しは八方美人になっても良いでしょ?」 「今までの分を取り戻さなきゃ!」
そう言いながら、 隣で明日の男と算段をしている君へ。
「其の男は違う気がする・・・」
そんな言葉を掛ける権利は無いんだよな。
---------- References May.29 2002, 「逞しく在りますか」 Jun.15 2003, 「人を舐めてやしませんか」 Jun.21 2003, 「幸せ太りに変えられるでしょうか」 |
2003年08月03日(日)
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