< 喜びの笑顔で逢いませんか >
一抹の不安を、 幾度と無く打ち消そうとした。
余裕の存在は、 消して悪い事では無い。
何事に対しても利点としてのみ働く筈の物であり、 落ち着いた行動には、 本来なら絶対的に不可欠な物なのだから。
「まさかな。」 「子供じゃあるまいし。」
蟻の一穴と言う諺を、 幾度と無く打ち消そうとして、 消せずに居た。
予定よりも早く、 貴女は地に降り立った。
予想よりも早く、 貴女は此処へ現れる。
「早く逢える。」
予定を切り上げて、 待ち合わせ場所に向かった俺の脳裏に。
時間的な貯金が、 まさか時間的な借金を産むとは、 浮かぶ筈も無かったのに。
「バス間違っちゃったかも・・・」
「途中で降りちゃった・・・」
突如始まる迷走。
「一人で行って待ってるから!」
あれだけ自信に満ちた貴女の姿は、 既に何処にも無い。
「オジサンに時間を聞いた♪」 「お兄さんだ!」
「酔っ払いだよ・・・」 「それは平日の時間だろう!」
「怖いよぉ・・・」
電話越しでしか聞き取れない、 酔った男との会話。
貴女の最大の魅力であり、 同時に最大の欠点である振る舞いと。
把握し切れぬ状況と。
「それで分かったの?」 「小坊主ぅ・・・」
「何で泣くの?」 「後で良い・・・」
苛立ちを隠せぬ俺の言葉に、 貴女は音声を無理矢理遮断した。
俺が想定した時間前のバスに、 貴女が乗ったんじゃない。
確かめずに、 何も聞かずに、 何も考えずに。
人の列に紛れて行ったのは、 貴女自身じゃない。
貴女の顔を一目見る度に。
如何して俺は、 嬉しさではなく安堵感ばかりを、 味わうんだろう。
---------- References Jun.27 2003, 「雲の上まで飛んで行けますか」 |
2003年06月28日(土)
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