< 背後から包んで良いですか >
貴女の文面は、 きっと俺の声を求めた物なのだと、 判断出来たから。
「小さな彼は実家だから。」 「一人寂しく食事です。」
貴女が書いて寄越す時は、 何時も俺の声を聞かせて来たから。
長い沈黙。
貴女の声は一向に聞こえる気配すらなく、 呼び出し音だけが鳴り続ける。
疑問符。 疑問詞。 疑心暗鬼。
いや。
想定外の状態に、 頭の片隅に置いてもいない出来事に、 疑念自体の、 浮かび来る猶予も無かった。
来客は無い。 入浴も無い。 外出には長い。 雪隠でも長い。
電算機の様に、 考え得る状況を羅列しては消し、 袋小路に行き着いた時。
貴女の泣き声が聞こえた。
人一倍甘えん坊の貴女。
懸命に一人で闘う時には、 相当の精神力を必要としているのだろう。
「色々想い出してね。」 「昔の事を反省してね。」 「それでね。」 「それでね。」
俺との出来事を想い返す時、 決まって貴女は、 不必要に物事を悪く捉えて、 不安定な状態に陥るから。
「馬鹿。」
安堵感から生まれ出た、 音に成らない程の小さな声。
貴女を荒海に放り出す事など、 有り得ないのだから。
背後の備えは俺に任せて、 目の前の課題に真っ向勝負すれば良いさ。
貴女の魅力は「猪突猛進」だろう? |
2003年04月29日(火)
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