< 何を言えれば良かったですか >
どれだけ上手に言おうと、 どれだけさらりと口にしようと。
愛しい人にあの一言を伝えた時。
言い様の無い重みと、 言い様の無い大きさを持った核が、 奴の心に産まれて居たんだ。
奴は一人前の雄。 そして不器用な雄。
一度口を開けば、 鉛の様に重く、 針の様に鋭い、 そんな言葉しか吐けない奴だから。
「おまえのおむつも替えてやるから。」
奴の想いの結晶は、 見劣りする物なのだろうか。
奴の想いの結晶には、 まだ足りない光があるのだろうか。
「ごめんね。」 「あなたと結婚する気はございませんの。」
自分の想いに返る言葉を、 ぶつけた想いに返る答えを、 友は人伝てに耳にした。
「俺に何が足りない?」
「年齢か?俺が年下だからか?」 「地位か?信用度が無いからか?」 「旦那か?まだ籍を抜けないからか?」 「経済力か?彼女の子を養えないからか?」
「それとも愛情なのか?」
奴の尽きる事無く並ぶ疑問符達。
何故俺に出来る事は、 其処に居続ける事だけなんだ。
意図は何だ? 真の意味は何だ?
お互いに、 あなたの子供が欲しいと言い合っても、 一緒には居ないと言う理由は、 いったい何だ?
もし貴女が俺に、 この言葉を伝えて来た時。
この言葉の意味を、 この言葉の意図を、 俺は正確に捉えられるのだろうか。
「俺、わかんねぇんだよ。」
一匹の雄が、 また隣でのたうち回る。 |
2003年01月29日(水)
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