スイッチ。
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中村サンが夢に出てきた。 なんと中村サンがあたしに告る。(笑 んで、付き合うことになるっていう本当にユメの夢。
今日から学祭だった。 開会式で、専攻科はウチらの学年の横の席やった。 そこに、中村サンの姿はない。
一昨日、中村サンのおばあちゃんが倒れた。 第一発見者は中村サンと弟さんで 救急車が来るまでに心臓マッサージをして できる限りのことをした。
そんなとき、偶然あたしは電話してしまったんだよね‥ 電話に出た中村サンは泣いていた。 あんな中村サンは初めて見た。
一時間後、落ち着いたよって電話があった。 おばあちゃんは頑張っている、でも助からないみたい、そう涙声で言っていた。
あたしは午前中はスタンプラリーしながら学祭を満喫していた。 心理学のブースで見た夢占いで 夢に友達が出てきたら、その人に連絡を取らなくてはならない、 と書いてあった。
あたしは携帯の電源をオンにしていた。 中村サンからの連絡をずっと待ってた。 夢にまで見るほど、中村サンのことを考えていたのだと思う。
午後からゼミの当番だった。 お客さんはほとんどこないし、退屈でただおしゃべりしていた。
すると、電話が鳴った。
『中村達也』
あたしは慌てて教室から出て電話に出た。
「わりぃ、お前当番かなんかじゃねーの?」
「いや、お客おらんし大丈夫ばい。」
「今日、ばーちゃんの葬式。」
「そっかあ・・」
「親からばさら文句言われてさ。家飛びだしてきた。1時から葬式なんやけど行くか迷ってる。このまま気晴らしにパチンコ行くか喪服姿のままやけど学校行こうかなあっち思いよる。」
「まじで?おばーちゃんにちゃんとサヨナラしたん?それで後悔しない?」
「おぅ。火葬したときに俺はばーちゃんに別れ告げたし。」
「中村サンがそれでいいなら、いいけど。」
詳しくはわからんけど何かあったんやろうな。 我慢すればなんとかなっても気がおさまらんかったんやろなあ。 中村サンは自分の気持ちに素直すぎて不器用なところがあると思う。
「お前、電源いれてていーん?連絡とりたくねーヤツから連絡こねーの?」」
「いや、くるよ。」
「は?大丈夫なん??」
「中村サンが心配やったけん電源いれたままにしてた。」
「まじで?ごめんなあ、ありがとう。今こうしてお前と話せただけでもヨカッタよ。」
「いやいや、まじすごい心配してたし。」
なぜか素直に言葉が出てきた。 素直な言葉が言えた。
やっぱり、あたしは中村サンが好きだ。
中村サンにとってあたしは仲のいい友達の一人で 妹分であって娘みたいな存在であってそれ以上の感情はない。 それ以上の存在になれないことくらいあたしはわかってる・・
気持ちは伝えたいけど もし今あたしの気持ちがバレたら、今の関係が崩れてしまいそうで怖い。 それだけは嫌だ。
やってけるよ、友達。 今までもやってこれたし、これからもやってけるさ。
このまま、友達のままでいなきゃ。
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