「CUT OFF THE CIRCLE」
最近(やっと)妹に恋人が出来た。二人のあいだに面倒な事情が取り巻いていた為に色々と相談にのらされたのだけど、なんとか落ち着いてくれたようなので一安心。その事情、わたしの何年か前と似ている。どうだった?その時どう思った?どうした?などと訊かれ、彼方へ押し退けていたものを引き寄せながら答える。お陰でその頃を鮮烈に思い出してしまった。 わたしには長い時間をかけて造形されたメビウスのような悪しき輪があった。その人と出逢うまでの恋人達は執着を押し付ける事が愛だと思い込んでいる人ばかりで今更思い出す価値すら無いように憶う。日常の歪への淨化を全てわたしに求めるような依存、世界から隔絶させる鳥篭に入れて飼い殺しにするような、挙句、有り余る独占欲が殺意へと変わったりするような。そういう人を惹き寄せてしまう魅力みたいなものがあるんだろうと友達は笑ったけれど、何処までもわたしには笑えない現実で。 嫌ってもいいから傍に居て。 誰も、何も、見ないでいい。世界の何にも、触れないでいい。 君を受け容れられるのは俺だけ。 誰かに渡すくらいなら殺してしまいたい。 愛の裏側を幾つも見た。悪夢のようなこれが愛? 誰よりも強く愛していると彼らは言った。それが愛だと言った。稚かったわたしは愛というものを未だ知らなかったのでそういうものなのだと思っていた。それなら愛なんて要らない、とも。 その人に出逢ってから漸く普通に恋愛しているなと感じていた。それまでとは全く異質な存在だった。けれどそれまでに成した輪、こころの歪は激しい渇きや苛立ちを生み、何もかもを貪り尽くすようにして破滅へ。諦めてくれればよかった。諦めてくれれば傷付ける事も破滅へと導く事もなかった。でも彼は諦めなかった。 「簡単に手に入れたものではないから、簡単に手放す気にはなれない」 そう言って感情にまかせ二人の関係を放り投げようとするわたしを幾度も嗜めた。時折、座り込んで動かないわたしと一緒に座り、立ち上がるまで待っていてくれた。何もかもを喰らい尽くそうとする頭を撫で、「貴女以外の事はどうでもいい」と全てを差し出してくれた。 彼と出逢わなければわたしは今も昏い魂の鏡の前でぐるぐると呪われた輪を廻っていたに違いない。悪しき輪を断ち切ってくれたのはその人だ。 「やっと恋愛してるって感じかな」 そう妹が言った。その笑顔を見届けてからただただ笑い返した。 |