「一本の煙草」

一本の煙草を手にとる自分に、意志の脆弱さをひとつ知る。
これの毒はもうわたしにとって躯に入ってくる異物でなくなっているのが哀しい。

一本の煙草に火を点ける自分を、ひとつ嫌いになる。
摂取した分だけ覚醒に妨げられる睡りを知りながら。
夜の精神が密かに狂い始めるのを知りながら。

泥水が足まで沁みているのは、自分が作った水溜りに嵌ったから。
泥まみれのままで、今度は自分が好きになれる何かをまた作ろう。


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