「これが僕の望んだ世界だ。」

戻らない時間を愛する行為はまるで屍の花を愛でるようだ。
それが不毛だと気付いたのは何時だったか。時間を取り戻したいとは思わない。この諦めの悪い人間が不思議とその時は己なりのベストを尽くしたと、幾つかのifを見ずにいる。巧く忘れられない記憶の数々。死神に甘く抱擁されるよう、虚ろに過去に甘やかされて何時までも留まろうとさえした。
幾つも淘汰してきた路を振り返っては其処に痛みが無い事を確認し、行くライフ。
慎重に選んだ分、手に有るものへはせめて揺るがぬ誇りを。
それが今に存在する強さでもあり、其処にどんなに美しく咲き誇る花苑があろうと、棄てた先の有する未来など多分どうでもいい。

本当のサヨナラを言った後で目覚める世界がある。
「これが僕の望んだ世界だ」
何度も頷く。そして眼の前に広がる世界の中に立つ自分を認識する。
「正しさを祈りながら」





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