徒然エッセイ&観劇記
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2002年04月22日(月) 「ジーザス・クライスト=スーパースター」ドイツ語版CD+GODSPELL日本版(一言)

言わずと知れた、若かりしアンドリュー・ロイド・ウェーバー作曲、ティム・ライス作詞の出世作の2001年ドイツライブ版。バンドの生演奏で、観客の拍手の音まで入ってます。
まず「おっ」と思ったのは・・・♪JESUS CHRIST SUPERSTAR♪ドイツ人はこれを「イェーズス・クリースト」と読みます。ドイツ語で「J」は英語の「Y」にあたる発音をするので。ジーザスを呼ぶときも「イェーズス」そういえば「イエズス会」って歴史の授業で聞いたことあるなぁ。神さんの呼び方まで言語によって違うとは驚きじゃないですか?しかしこの曲では原作を重んじてか、二度目のサビでは律儀に英語読み「ジーザス・クライスト♪スーパースター♪」と歌っていました。
それから♪Hosana♪での「ホーサナホーサナ♪」というところ。これは日本語だと「王様王様サマサマ」と聴こえますが、元々は「ホサナ」って掛け声かなんか?だったんですね。へー。どんな意味なんだろ。

というちまちまとした違いは置いといて、まずはジーザスが!
アホです。
もう、声質も歌い方も、全てがただのアホな若者風で、ただイっちゃったヤツが間違って祭り上げられた印象(笑)叫ぶところなんか、ただのヒスにしか聞こえない。
これはもう、キャスティングする段階で「アホでいこう」と決まっていたのでしょう。だってジーザスが歌うとこだけ、妙にアホな演奏つけてるし。あっさり死ぬし。
しかしこれは結構深い設定で、こうなると民衆が失望するのも自然だし、ユダが裏切るのも尤もで、ジーザスが十字架に架けられるのは自業自得。
あらあら、ジーザス形無しね。まるでインチキ宗教の末路のよう・・・

対してユダが、歌上手いし、堂々としてるし、絶対コイツの方が正しい。そう思わせるキャラ。
ドイツ版はユダを前面に押し出して、もしかして観客である「キリスト教に失望した人々」の代弁者として機能しているのかもしれません。ためらいつつも、ジーザスを捨てざる終えない。彼が結局は一人間にしか過ぎないことを知っているから。とはいえ、ユダは結局自殺しちまうわけですが(汗)キリスト教圏の未来やいかに?
ところでユダはもともと「JUDAS」という表記で「ユーダス」と読みます。これは英語でもドイツ語に近い読みをするんですね。元々はその頃そこで使ってた言語なんでせうけども。

ジーザスがアホなので、マリアも「何でこんなダメンズにひっかかったの?ご愁傷様」て気がする。この設定でいくと、マリアだけがずっとジーザスを愛し続けた盲目なお馬鹿さん。愛は盲目(笑)堂々たるいい女性なんですけどね。

他のキャストは、日本版と似た声質。演奏はサックスやピアノを目立って取り入れ、アレンジしていますが元が古くさいロックなのでやっぱりチープな感じ(笑)いえ、この作品はこれでいいのです。
それにしても、やはり曲がいいですね〜!曲調、音程と、内容や人物の心情がピタリと合っていて、曲の構成、繋がり、舞台とのリンクの仕方、まっこと素晴らしいです。やっぱ天才だウェーバー!!

しかしかようにジーザスを貶めるとは・・・キリスト教圏に住んでいない私には分かりかねますが、もうキリスト教な人々も、ジーザスを素直に神格化することはスッキリサッパリ諦めてんでしょうか?
フランス人が日本について書いた本で「日本人は仏教徒が多い」て書いていて「そうか?」と思いましたが・・・まぁ、真剣に信じてないにしても、仏教的な「世界観」を抱いているところはあるでしょう。
キリスト教圏だって、もう結構カタチばかりで、教会に行くのもただの習慣であって別に本気で信じちゃいないとか?でも「世界観」はやっぱり一神教なんでしょうね。ジーザス死すとも神は死せず?
しかしこの舞台、日本ではしっかり「神格化」した感じの神々しいジーザス像でやってるというのがまた面白いですね。おちょくるための土台がそもそもないんだから、面白くするにはそうするしかないか。

これに近い、もう凄まじくジーザスを普通の人として捉えてる「GODSPELL」というミュージカルを先日見ました。裏ジーザス・クライスト=スーパースターと呼ばれたとか?
ジーザスがピエロに近い格好とメイクをして、使途達に優しく教えを諭すミュージカル。「右の頬を打たれたら、左の頬を差し出せ」「人類皆兄弟☆仲良くね」「求められれば与えよ」などなど。ちゃんと最後は十字架に架けられますが・・・あんまりジーザスと関係無しにとにかく楽しかったですなぁ。
お気楽な歌やダンスとの相乗効果で、「祈り」が「愛」に転化し、ポジティブな分かりやすいパワーとして伝わって来ました。そうだよ、宗教って結局そういうもの。単純に人々の心が癒されればいいのです。

既にただ「話を成り立たせるための一つの題材」と化した聖書。信性を剥奪されたジーザス。
結局元は、やっぱりただの人間だったんだよなぁ、とこういった舞台を見ると思います。
歴史上のどんな偉大な人物も、ただの一人の人間。
どんな凄まじい出来事も、人間の引き起こした一事象。

明日はどんなジーザスもどきが現れ、世の中を掻き乱し、人心を潤して行きますやら。
みんなが、幸せになられたらいいなぁ・・・ってそれはエンジェル!(←劇団四季「夢から醒めた夢」より)


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