【虎の自叙伝〜その21】 この瞬間
最近、本の衝動買いが多くなった。子供の頃、本を読むことなんて大嫌いだったのに。なんとなく記憶にあるのは高校を卒業したあたりから。大きな理由は、電車を使うようになったこと。小・中・高と通学はすべて歩きだったから。 高校卒業後、1年ぐらいフリーターをやってた時期があって、バイト先まで電車で通勤していた(この場合、通勤って言うのかなあ)。乗ってる時間、およそ30分。けっこうヒマなんだよねえ、こういう時間。だから自然というか必然というか、文庫本なんか読みようになってた。よく読んだジャンルは、SFモノと推理小説かな。眉村卓なんかけっこう好きだったなあ。今、店頭ではあんまり見ないけど。でも、その頃は文庫本ばっかりで、ハードカバーなんてほとんど買わなかった。理由はただ一つ、高価だったから。文庫本が出るまで待ってりゃいいやって感じ。でも、今は違う。なんていうか、読みたい時が大切なんだって思えるようになってきた。その瞬間の気持ちっていうのがさ。だから、今買わないともう一生この本には出会えないかもしれない、なんて思ったりしてつい買ってしまう。これは映画でも同じ。見たい時にはすぐに見に行く。前はビデオになるまで待ってたんだけどね。僕の場合、この瞬間のインスピレーションっていうのがすごく大事で、たぶんこの感覚を一番大切にしているような気がするんだ。この辺が感覚的って言われる所以かもしれないけど。でも、自分でそんな風に思うようになったのはここ2、3年の話。それまではけっこう建設的な思考の人間だと思ってた(笑)。この話をすると、まわりの人は信じられないって顔をするんだけどね。気づくのが遅すぎるってことなのかなあ。
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