セクサロイドは眠らない

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2002年07月17日(水) いろんな噂聞くから、てっきり私への気持ちも遊びだと思ってたのに、こんなところまで追い掛けてくるなんて、何考えてるんだか。

「あーあ。今日、家に帰りたくないなあ。」
「どうしたのよ?」
「うん。なんだかさ。昨日もちょっとやっちゃって。」
「え?喧嘩?」
「そうそう。新しい母親と。」
「そうなんだー。あっちも、さ。財産目当てか何か分からないけど、もうちょっとあたしらに気を使えってのよねえ。」
「いやまあ。ね。そんなにひどいわけじゃないけどね。つまんない事よ。化粧が濃いってさ。マスカラ、ちょっと付け過ぎじゃないの?って、さ。」
「ふうん。」
「あなたは若いんだから素肌が一番魅力的よ。とかさぁ。ほんとにうるさいんだから。」
「あ。でも、それ当たってんじゃない?所詮はあたしらの若さに太刀打ちできないってことでしょう。」
「ま、言えてるけどね。」
私は、かぐや姫と顔を見合わせて笑う。

授業のチャイムが鳴る。

「じゃ、今日一緒に帰ろうね。」
と、かぐや姫は、隣の教室へと消える。

私は白雪姫。目下の憂鬱は、新しいママ。そりゃ、確かに美人だしさ。性格もまあまあだけど。にしてもさあ。パパは何が良くてあんな女を選んだの?死んだママの事、忘れちゃったの?あの女の事、どうしても「お母さん。」って呼べなくて。私は、城に帰って、あの女の顔を見る事を考えただけで憂鬱になってしまう。

--

「ただいまー。」

「おかえりなさい。」
継母は、今日も、馬鹿みたいにニコニコして、私を出迎える。

そういうのも、なんだかイラつく。だって、さ。一応、一国の王妃ともあろうものが、娘の帰宅のお出迎えってのも、どうかと思うよね。

私は、継母を無視して、自分の部屋へまっすぐに行く。

ちぇ。どうせ、あの人だって私の事嫌ってるくせに。なんで、そんな風に笑顔が作れるのかな。それに、さ。あの肌。びっくりするぐらいスベスベで。歳幾つだよって感じ。

私は鏡を取り上げて、出来かけのニキビをつつきながら、つぶやく。
「ねえ。鏡さん。私のほうがぜーったい綺麗だよね。」

--

夕食の時間。

パパも一緒の席で、継母が急に口を開く。
「ねえ。白雪ちゃん。この前の電話の事だけどね。」
「・・・。」
「なんていうか。私としては、ちょっと感じ悪いかなって思ったのよ。だって、お名前聞いても、答えないんですもの。」
「・・・。」
「あのね。誤解しないで欲しいの。電話がいけないって言ってるんじゃないのよ。」
「だったら、携帯買ってよ。友達、みんな持ってるんだからさあ。自分だけ、恥かしいよ。最近じゃ、よその星だって繋がるヤツが出てるのに。」
「そういう事じゃないでしょう?」

継母の声が少し震えている。

パパは、黙って。心配そうに私と継母を交互に眺めている。まったく、パパもこの女には骨抜きなんだから。間違っても、娘の私の肩なんか持ちゃしない。

「とにかく。今度の誕生日、携帯買ってよね。パパ。」
私は、ナプキンをテーブルに叩きつけると、席を立って、部屋を出て行った。

やっぱり。

誰も追い掛けて来ない。

なんだかくやしくて、涙が出る。どこまで人を馬鹿にしたらいいんだろう。父親なら、たまには娘の味方をしてくれたっていいものを。あの女が来てからというもの、パパもすっかり変わってしまった。

私は夜、城をこっそり抜け出す。もう、何年もここで暮らして来たのだもの。家臣に見つからずに抜け出すのなんて、簡単だ。

もう帰るつもりはなかった。

私は、森に入る。森を抜ければ、隣の国だから。

--

すっかり疲れてしまった。夕飯をろくに食べてないので、お腹もペコペコ。私は森の中でうずくまり、そのまま、動けなくなってしまった。

--

「ハイホーハイホー」
声がする。

私が目を開けると、そこに可愛らしい木こりがいる。

「綺麗なお姫さま、スープをどうぞ。」
私は森の小人達に助けられて、この小屋に来たらしい。

私は恥かしいぐらいにガツガツとスープやパンを口に詰め込んだ。

それから、また眠った。

小人達の会話が聞こえる。
「尊氏さまが・・・」とか、「お姫さまなら我々の活動の宣伝灯に・・・」とか。

次の日、私は、小屋の掃除を命ぜられた。そんな事はしたくないと反抗したのだが、一番年取った小人が、「ここではみな等しく働き、みな等しく与えられるのです。」なんて言うから、しぶしぶ従った。

堅いベッドにも慣れない。

だけど、森を抜けようとするのは死を意味する、と小人が脅すから、私はそこから動けない。

--

ある日、小人がみな出払っている時に、黒づくめの衣装を着た老婆が林檎を売りに来た。

「まあ、おいしそう。」
「白雪姫さん、林檎、好きでしょう?」
「あら。どうして知ってるの?」
私は、林檎を買って。

小人がいないうちに急いで頬張る。ここではみな、等しく分かち合うのがルールだから、自分だけ食べたとなったら何を言われるか分からない。

あんまり急いで食べたので、私は林檎を喉に詰まらせて、息ができなくなて・・・。

倒れたところまでは覚えている。

--

誰かが私を揺すっている。

そうして、喉から何かがポロリと取れる感触がして、私は目を開く。

「良かった。気付いたんだね。」
「やだ。あんたは。」
「ああ。きみのママに聞いて、ここを知ったんだよ。」
「なんでママがここを知ってるのよ?」

この前から、しきりに城に電話して来ていた王子だ。夕飯の時、継母との揉め事の原因になったのも彼からの電話だ。ちょっと遊んで風でさ。いろんな噂聞くから、てっきり私への気持ちも遊びだと思ってたのに、こんなところまで追い掛けてくるなんて、何考えてるんだか。

背後で継母の声が聞こえる。
「ごめんなさいね。後をつけさせてもらったの。で、白雪ちゃんが好きな林檎を差し入れたくて。なのに、こんなことになるなんて。」

少女みたいにめそめそと泣くから、私は、まいったなあ、と思う。

「ねえ。こういう時、王子は姫にキスするものじゃなくって?」
私は、王子に向かって言う。

王子は驚いて、それから頬を染めて、私を抱き抱える。

私は、王子の首に手を回し、自分から接吻に行く。

「まあ。最近の若い人達は。」
継母が驚いたように叫ぶから。

「はは。いいじゃないか。若い者は若い者で。」
パパがなだめている。

「パパ、ママ、私、彼とデートしてから城に帰るわね。」
そう言って、王子の馬に乗って。

「あなた・・・。白雪ちゃんが、ママって言ってくれたわ・・・。」
なんて、継母が声を詰まらせる。

おやまあ。また、泣いてるよ。

本当に、パパはあの人のどこが気に入ったんだか。

「ねえ。あなた。いいわね。若いって。」
「そうだな。うちの娘は最高に可愛いしな。」
「あら。ちょっと妬けるわね。」
「はは。馬鹿だな。娘は娘、きみはきみさ。」
「ねえ、あなた。世界で一番美しいのは、誰?」
「それは、お前に決まってるだろう?」

「ね。行こうよ。いちゃついてるおじさんとおばさんは放っておいてさ。」
私はあきれ顔で王子に言う。


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