セクサロイドは眠らない
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2001年12月12日(水) |
早くこの身で味わいたい。これこそが、恋と言わずして、何を恋と言うのだろう。 |
むかしむかし、あるところにお姫様がいました。
そのお姫様は、童話に出てくるお姫様らしく、美しく、そうして、わがままでした。自分が誰よりも美しいことを知っていて、周囲を困らせるのです。
例えば、庭に出て、カエルの足を掴み、 「なんて醜いの?」 と、放り出しては、声を上げて笑うのです。
そんなお姫様は、童話に出てくるお姫様のご多分に洩れず、生まれた時、その祝いの席に招かれなかった魔女から呪いをかけられていました。
「姫が16歳の誕生日の日、最初に見たものに永遠の恋をするだろう。」
恋とは、これまたロマンティックなと思うかもしれませんが、これは実に大変なことです。朝一番に王様の顔を見たらどうなるでしょう?あるいは、お付きの侍女を見たら?いずれにしても禁断の恋に苦しむことになるのです。
幸いにも、お姫様は、このどちらにも恋をしませんでした。
お姫様が恋をしたのは。なんと!窓辺でケロケロと鳴いていたカエルだったのです。
お姫様は、その日から、カエルに恋焦がれる女になりました。カエルが少しでも見えないと大騒ぎです。城中の者にカエルを探すように言いつけるのです。
もちろん、カエルは、そんな姫を冷ややかな目で見ていました。当たり前です。さんざん自分をいたぶって笑い飛ばしたお姫様を今更愛せよ、などとは無理な話です。
お姫様は、嘆き悲しみ、そうして、自分に呪いを掛けた魔女を探す旅に出ました。そうして、長い長い旅の果て、ようやくお姫様は、魔女を探し当てました。
「お願いです。私をカエルにしてください。」 「カエル、じゃと?」 「ええ。恋するあの御方と同じカエルになりとうございます。」 「そりゃ、まあ、私に出来ないことはないが。ちと、高くつくぞ。」 「私が差し上げられるものなら、何でも差し上げますから。」 「そうか。」 「じゃあ、その、美しい顔と、美しい声を、私に寄越すのだぞ。」 「分かりました。カエルにさえなることができれば、私のこの顔などに、なんの用もありません。」
お姫様は、その瞬間、このうえなく美しく謙虚な心の持ち主でした。
「では、覚悟せよ。」 魔女は、杖を高く振り上げて、魔法の呪文を唱えます。
そうして、お姫様は、念願のカエルになることができました。
お姫様は、お城に戻り、恋するあのカエルを探します。
恋されたカエルも、お姫様がカエルにまで姿を変えてくれたことにいたく感動しました。
そうして、二匹は、手に手を取って、お城の池に向かったその瞬間。
ぶちっ。
王様の靴に踏まれて、あっけなく、その命と、恋を終わらせることとなったのでした。
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「というお話。」 「ふうん。」 気のない声で、美しい姫は窓の外を見つめる。
「いいですか?姫。この物語の教訓はなんだと思いますか?」 「カエルになったら、踏まれて死んじゃう。」 「違います。身分不相応な恋には、それなりの結末しかない、ということです。」
お姫様は、大臣があんまりうるさく言うので、ハエを払うようなしぐさをする。
その物憂げな、美しい瞳は、窓の外に釘付けで。
今度来た庭師は、なんて美しい体をしているのかしら。と、考える。
隣の国の王子より、よっぽど素敵だわ。早くこの身で味わいたい。これこそが、恋と言わずして、何を恋と言うのだろう。
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