セクサロイドは眠らない
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2001年09月16日(日) |
「夏と冬、どっちの季節に恋に落ちることが多い?」彼は、私のとまどう体に、何の迷いもなくまっすぐに入って来る。 |
「退屈したんですか?」 知人の披露宴を抜け出してロビーで煙草を吸っていると、彼が声を掛けて来た。 「ええ。ちょっとね。」 私は曖昧に笑い、煙草をもみ消した。42歳の独身でくたびれた女であるところの私は、その美しい青年に声を掛けられて妙に照れてしまったのだ。
「僕も、退屈して抜け出して来ちゃった。」 「そうなの?素敵な式だわ。」 「本当にそう思ってる?」 「ううん。早く終わらないかなって。どこかで飲みなおしたいなあって思ってたのよ。」 「僕も。」
私と彼は笑った。そうして、私は、新婦が姪であること、彼は、新郎が自分の知人であることなどを打ち明けた。それから、式場を出て、彼が小腹が空いたと言うので、居酒屋へ行った。私は、始終煙草を吸い、彼は、旺盛な食欲を見せた。そうして、他愛のないことをしゃべり、私は笑いに笑った。何も考えることなく、こんなに誰かと楽しい時間を過ごしたのは久しぶりだった。
実際のところ、なぜ、彼のような若い男が私になぞ興味を持ったのか不可解だった。そうして、暖かい店を出て、冷たい風が吹く歩道を並んで歩いた。
「夏と冬、どっちの季節に恋に落ちることが多い?」 突然、彼が聞いてきた。 「さあ。どっちかしら。夏・・・、かな。夜遊びするから。」 「僕は冬だな。ほら、こんなことができるだろう。」 そう言って、彼は、私の冷たくなった手を握り、彼のコートのポケットに入れた。
私達は、無言で指を絡め、それからホテルに行った。
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「私なんかでいいの?」 私が問いかける言葉を唇でふさいで、彼の指が、私の黒いドレスのジッパーを下す。
もちろん、それまでも彼ほど若い男と寝たことがないわけでもなく、私は、彼のことを、そういった若い男達と同じだと考えようとするのだが、彼のどこかしらやさしい愛撫が私を無防備にさせる。
「きみが好きになったんだ。」 「私のどこが?」 「煙草を吸う仕草。子供みたいに笑うところ。その、危ういところ。」 彼は、私のとまどう体に、何の迷いもなくまっすぐに入って来る。私は、張り巡らせた城壁をあっさりと崩されて、彼の肉体の前に完全降伏する。
「声を出していいから。全てを僕にゆだねて。」 彼の声はどこから聞こえてくるのだろう。どこかとても遠いところで。彼は、大丈夫だよ、おいで、と言う。私は、突き上げられて、何度も何度も昇りつめてしまう。
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それは、恋なのだろうか?
25歳の彼に、私は心を明け渡すことができない。彼もまた、私のかたくなな心を無理矢理こじ開けることはしない。
ポツリポツリと交わされるメールの中で、彼が結婚していることを知る。
それでも、私のことが好きだと言いきる彼をどこまで信じればいいだろう?信じられない心で、彼に内緒で幾人もの男と寝る。それらは、ただ、数でしかない。若い恋人を持つ不安を打ち消そうと、ただ、数だけを増やして行く。
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ある日、長年の友人であるところの男性にプロポーズされ、私はとまどう。
そうして、若い恋人に伝える。
結局、私は、試したかったのだと思う。彼の心を。私が結婚するとなれば、何か感じてくれるだろうか。その短い電話で、彼は、「そう。おめでとう」とだけ告げて、電話は切れる。
もう電話は掛かってこない。 私は、恋の終わりを知る。
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私は夢を見る。
彼は翼をつけて空を軽やかに舞っている。私は、地面からそれを見上げるばかり。彼が手を差し伸べるけれど、私の体はそこから全く動かない。
そうやって、次の瞬間、彼の翼はバラバラになる。白い羽が舞い散る。もう、彼はいない。あたり一面羽が雪のように降りしきる。
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一通の手紙を受け取った。
「さようなら。」と。
「恋の苦しみのない世界に行く。」と。
「僕だけが知っていた恋が、確かにそこにあった。」と。
「幸せだった。」と。
私は、男の純情っぷりにあきれながら、その手紙を破り捨てる。 ベランダから小さくちぎった破片を風に乗せる。
羽のように舞う紙屑を見つめて、私は泣く。
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