セクサロイドは眠らない
MAIL
My追加
All Rights Reserved
※ここに掲載されている文章は、全てフィクションです。
※長いこと休んでいてすみません。普通に元気にやっています。
※古いメールアドレス掲載してました。直しました。(2011.10.12)
※以下のところから、更新報告・新着情報が確認できます。 →
[エンピツ自由表現(成人向け)新着情報]
※My Selection(過去ログから幾つか選んでみました) → 金魚 トンネル 放火 風船 蝶 薔薇 砂男 流星群 クリスマス 銀のリボン 死んだ犬 バク ドラゴン テレフォンセックス 今、キスをしよう
俺はさ、男の子だから
愛人業
DiaryINDEX|past|will
2001年09月12日(水) |
私は、言われるままに、鎖のついた足枷を自分の足につける。 |
その、私がメイドとして連れて来られた時、その屋敷は随分荒れていた。屋敷の主人は、頑固で、偏屈で、横暴なので、使用人は長続きしなかった。
「お前みたいな人形に、私の世話が出来るというのか?」 「はい。ご主人様。」 「みんな、そうやって最初は返事だけはいいのだがな。私がちょっと怒鳴ると、すぐ暇を取って逃げ出してしまうんだよ。」 「私は、一生お仕えしますわ。」 「当たり前だ。」
ご主人様は、私の顔をしげしげと眺める。
「お前は、亡くなった妻に似ている。妻も、お前のように従順で、美しかった。」 「ありがとうございます。」 「だが、ある日、私を置いて逃げようとした。お前は逃げないだろうな。」 「私は、一生貴方様にお仕えするのが仕事ですわ。」 「分かった。下がっていい。」 「はい。」
私は、その古ぼけた屋敷に元の美しさを取り戻そうと、掃除をし、庭の雑草をむしる。屋敷には、ご主人様と、食事を作る老婆と、私だけだ。老婆は、何を聞いても一言もしゃべらない。
「ご主人様、お茶が入りましたわ。」
ある夜、ご主人様の部屋を訪ねると、ご主人様はいない。その書棚をずらしたところにある隠し扉から、地下への階段が続く。私は、ご主人様を探して、地下に下りる。
「ご主人様?」
目をギラギラとさせたご主人様が振り向く。
その地下の部屋には古ぼけたベッドの上の白骨死体。長いこと封じ込まれていた異臭。床を這う鎖。
「なぜ、ここに来た?」 「貴方様を探して。」 「早く出て行け。」 「かしこまりました。」
--
もう、随分長い年月が過ぎた。
老婆は、ある日、静かに眠ったように死んでいた。私は、主人に言われて、庭に穴を掘り、老婆を埋めた。
「もう、お前と二人きりになってしまったな。」 「はい。ご主人様。」 「お前に頼みがある。」 「はい。ご主人様。」 「私が、もし、病気になったりしたら、あの、地下の部屋に連れて下りてくれないか。」 「はい。ご主人様。」
--
ある夜、ご主人様は、急に胸を押さえて、床にくずおれる。
意識はあるが、体が自由に動かないご主人様を抱えて、私は地下に下りる。
そのベッドの白骨の側にご主人様を横たえる。
呂律の回らない舌で、私に命ずる。 「その、足枷をはめろ。」
私は、言われるままに、鎖のついた足枷を自分の足につける。
「お前は、決してここを出るな。私の側にずっといるんだ。」 「はい。ご主人様。」 「頼む。どこにもいかないでくれ。」 「はい。ご主人様。」
ここには、水も食べ物もない。
ご主人様は、衰弱して、ある日、動かなくなる。
私は、ご主人様と奥様が並んで眠るベッドの側で、鎖に繋がれたまま、座り続ける。
ご主人様の肉体が朽ちて行くのを眺めながら。
何ヶ月も。何年も。
|