セクサロイドは眠らない

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2001年08月22日(水) 彼を私の肉体に取り込んでしまう妄想の中で達する。

朝起きて、お気に入りのエッセイが更新されていない事に、少々がっかりしながら、パソコンのスイッチを切る。私が立ち上がった気配に、水槽の金魚達がざわめく。私は、微笑んで、冷蔵庫の肉片を取り出し、水槽に入れてやる。金魚達は待ちきれずに、水音を立てて肉片をついばむ。

自宅のプールでひと泳ぎして出勤。

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仕事はつまらない。オフィスの受付に置かれた水槽だけが心を和ませる。ボンヤリと、水槽を眺めていると、新人クンが話し掛けてくる。

「魚、好きなんですね。」
「ええ。とても。」
「僕も、割りと好きなんですよ。」
「家で飼ってる?」
「ええ。飼ってますよ。弟は、珊瑚なんか育ててるみたいですけど、僕は魚が好きなんですよね。」
「ねえ。うちに来ない?」
「え?いいんですか?」
「ええ。魚、好きなんでしょう?うちのを見せてあげるわ。」
「そりゃそうですけど。いいのかなあ。なんか抜け駆けみたいで。」
「抜け駆け?」
「いえ。あなたに憧れてるヤツが多いってことです。」

新人クンは笑い、私達は、じゃあ帰りに、と言葉を交わす。

--

「すごい家ですね。」

彼はびっくりして、玄関から中を見回す。

「友達の家なの。長い旅行に行ってるからその間貸してもらってるのよ。」
「へえ。いいなあ。」
「その代わり、友達が飼ってる金魚の世話をするのが約束なの。」
「金魚?」
「ええ。友達はね、変な趣味だけど、そりゃあ金魚が好きなのよ。」

家中の水がザワザワと音を立てるのを感じる。

落ち着きなさい。

ワインを勧めると、彼は饒舌になり、オフィスでの私の噂や、家で飼っている熱帯魚の話をとめどなく語り出す。私は、部屋の照明が水槽を照らすのに魅入っている。

「泳がない?」
「え?」

私は、彼の手からグラスを取り上げると、手を引いて、プールのある地下へ降りる。

「プールまであるんですか。」
「そうよ。素敵でしょう?」

彼は相当酔ってフラフラしている。

私は、服を脱いで水に入る。彼もまた服を脱いで、水に入る。

「きれいだ。」と、彼は、私を見つめる。水中で抱き合うのは気持ちいい。

「冷たい体だね。」

私の乳房が、水面でユラユラ揺れて、彼はその乳房にそっと口をつける。

ええ、私の体は冷たい。

「ずっとこうしたいと思ってた。」
彼は熱に浮かされたように、私の体にしがみつき、下半身に足を絡めてくる。水中で藻のように揺らめく私の陰毛をまさぐり、私の唇を吸う。プールサイドで、背後から入ってくる彼のモノを感じ、私は、彼を私の肉体に取り込んでしまう妄想の中で達する。

そう。

我慢できないのね?

いいわ。

私は、少々力をこめて、酔った彼の顔を水中に押し込む。彼は、大して抵抗もせず動かなくなる。

いらっしゃいな。

どこからともなく、金魚達がやって来て、彼の体に群がる。

彼の死体から出る血が赤いのか。金魚達が赤いのか。

私は、可愛い流線型が踊るのをうっとりと眺める。


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