セクサロイドは眠らない
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2001年08月21日(火) |
焼け跡に転がった私の頭は青空を見上げる |
私は、子供のいない夫婦のために作られたドール。12歳の少女の姿。愛らしい顔、愛らしい声、従順な性格。
その夫婦は、裕福で、とてもやさしい。私は、その夫婦を「おとうさま」「おかあさま」と呼んで過ごした。でも、ドールは、いつまでたっても子供のまま。「おとうさま」と「おかあさま」は、屋敷の中で愛玩するだけしかできないドールではなくて、成長し、外に連れて歩ける本当の子供を欲しがった。
そうして、彼女が来た。5歳の、健康で、太った少女。その日から彼女は、私の「いもうと」となった。「おとうさま」と「おかあさま」は、私に対するより、何倍も、笑ったり泣いたり怒ったりしながら、彼女を可愛がった。
彼女は、私のことを「おねえさま」と呼ぶ。「おとうさま」と「おかあさま」からそう教えられたからだ。いつしか、私よりずっと大きく成長したが、それでも「おねえさま」と呼ぶ。「いもうと」は、醜い少女に成長した。容姿だけでなく、心も。私の美しさをねたみ、私の髪やドレスを切り刻んだりと、随分ひどいことをした。それから、次第に外泊するようになり、悪い男の子達と付き合うようになった。
「おとうさま」も「おかあさま」もそんな「いもうと」を悲しそうに見ているだけだった。
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「おかあさま」は、時折、私の部屋へ来て、寂しい顔で私を抱き締める。 「どうしてこんなことになっちゃったのかしら。ささやかな普通の幸せが欲しかっただけなのに。」
「そのうち何もかもうまくいくわ。」 私は、小さな人口知能の中から慰めの言葉を検索する。
どんなに美しく、どんなに従順で、どんなに愛されるドールでも、時が来て不要になればスクラップ。でも、人間はスクラップにはできない。可哀想な「おかあさま」。可哀想な「いもうと」。
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「おとうさま」も「おかあさま」もすっかり年老いてしまった。
「おとうさま」と「おかあさま」の財産だけをさっさと手に入れたい「いもうと」はある夜、屋敷に火をつける。
焼け跡に転がった私の頭は青空を見上げる。
私は、その家で、いつも見ているだけだった。
何も望まなかったし、どこにも行かなかった。
ドールは、幸せが何か、なんて考えない。
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