セクサロイドは眠らない

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2001年08月18日(土) 「なんでいろんな男と寝るの?一回寝るだけじゃ分からないだろう?」「一回で充分なのよ。」

学食を食べ終えた後、考え事をしながらアイスコーヒーを飲んでいると、男がやって来た。

「ちょっと付き合ってくれないかな?」
「ごめんなさい。忙しいの。」
「ああ。ごめんね。じゃ、時間が出来た時でいいよ。」

男は、慣れた手つきで携帯電話の番号を私の手に滑らせてくる。

--

帰宅して、彼の膝の上に頭を載せてボンヤリしていると、彼が
「何かあった?」
と聞いてくる。

「ううん・・・。何も。」

--

「全然電話して来てくれないんだね。」
また、あの男だ。
「ごめんなさい。あなたが私に何の用事かしら?」
「ああ。ごめんね。いきなりだったものね。きみの研究室の○○ってヤツがいるだろう?あいつと、サークルのほうで一緒でさ。きみの噂を聞いて、少し興味を持ってね・・・。」

あの噂を聞いて来たのね。

私は、構内でちょっとした噂になっている。いろんな男と寝ているという噂。教授と寝て、単位を取らせてもらったという噂。

「ねえ。あの車、あなたの?」
「ああ。そうだけど?」
「ね。海に連れて行ってくれない?」
「いいよ。行こう。」

--

波の音だけがする。浜辺の夜は静かだ。

「きみ、すごくいい子なのに。」
「いい子なのに、なあに?」
「みんながいろいろ噂している。」
「知ってるわ。」
「一回寝ると、男を捨てちゃうってね。」
「そうよ。」
「本当のこと?」
「ええ。本当。」
「なんでいろんな男と寝るの?」
「本当に好きになれる人と巡り会えるかもしれないと思って。」
「一回寝るだけじゃ分からないだろう?」
「一回で充分なのよ。」
「厳しいんだな。僕、試してみる?」
「あなたが望むなら。」

女の子に人気があるという男は、思ったより純情で、控えめな愛撫。浜辺にシートを敷いて、砂だらけの足をからめる。私の日焼けの線に添って、そっと舌を這わせてくる。新しい男と寝るのは、いつだって怖い。いつだって苦痛だ。男のモノを入り口に感じて、体をこわばらせる。

「大丈夫?」
男のやさしい声。
「うん。大丈夫。奥まで来て。」

そう、奥まで。あなたの全部を。あなたの生まれて来た意味も、ここにいる意味も、何もかもを教えてちょうだい。男の汗のしずくが、私の乳房に落ちて、つたって流れる。男のうめき声と共に、彼の全てが流れ込んで来る。

--

「泣いているの?」
彼は、私の髪をなでる。
「また、ダメだったわ。」
「そのうち、会えるさ。」

男と交わった瞬間、男の心の中が読めるなんて、なんて嫌な能力なんだろう。

本当に醜いのは、私の心。

試験の前になれば教授と寝る。

別れ際に、一つ二つ相手の秘密を突き付けてやれば、相手は驚いて私に二度と近寄らなくなる。

そんなことを幾度繰り返して。

「ねえ。抱いてちょうだい。」
「きみの欲望のままに。」
空っぽのドールの、その人口知能が吐き出す安っぽい愛情表現になぐさめられて、今夜も彼の腕の中で眠る。


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